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第28話

…… 「光輝さん…」 ……… 「愛してます、」 ずるい… 「なんで……なんで…、そんな事……」 脚にヘドロが絡み付いたみたいに動かせない。 もう、逃げられない。 「光輝さんが本気で好きだから伝えたかったんです。 あんな事してでも縛り付けたかった。 餓鬼みたいに自分の事しか考えらんなかった。 ただの自己満足ですよね。 気持ち悪いですよね。 でも、伝えたかった……」 古志の声は震えている。 何時も自信に満ちた声なのにこんな声、はじめて聞いた。 腕を掴む手が熱い。 ジリジリと照り付ける太陽よりも熱い。 汗か涙か、海水か、もうなにかわからないそれが頬を伝う。 「本当、ですか…」 「え、あ、はい。 泣かせて…、 ……ごめん。」 寂しげに吐き出された言葉は静かに海に溶ける。 熱い手が離れ背中を向けた古志くんの腕を、今度は僕が掴んで振り向かせた。 格好良い人は驚いた顔も格好良いんだな、なんて素っ頓狂な事を思ってしまう。 逃げない 「嬉しいんです…嬉しくて…、嬉しく、て……涙が、とまらないんです」 「せんせ…」 こんな事、教師として許される事じゃない。 同性愛。 でも、生物としておかしい話じゃない。 「うれし、涙、ですか」 「はい…」 「ははっ、俺も嬉しくて泣きそうです」 顔に付いた水滴を払う様に頬を滑る熱い手が気持ち良い。 綺麗に整った眉が八の字を描く。 それでも格好良いのだから羨ましい。 「キスしても良いですか? 駄目って言ってもしちゃいますけど。」 チュ…チュ…ッ 「古志く…っ、外…見られ、んんッ」 ジリジリと照り付ける太陽に見せ付ける様、古志くんは暫くの間キスをやめてはくれなかった。 ほんの少し、しょっぱかったのは海水のせいだったのだろうか。

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