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第36話

昼食もご馳走になり、釣りと思ったが相川は母親に頼まれお使いに出掛けた。 食べて急に動くのも消化に良くないですしゆっくりしていてくださいと言われ、古志は縁側で空を眺める。 朝は綺麗な顔を見せていた朝顔もこの気温にぐったりしていた。 「古志くん」 優しい声に振り返ると相川の母親が隣を指差した。 頷きスペースを空けると、ありがとうと腰をおろす。 手に持ったお盆の上には、よく冷えたサイダーとぶどう。 「おやつ。 良かったら食べてね」 「ありがとうございます。 いただきます」 「ねぇ、光輝って学校じゃどんな感じなの? あの子、あんまり自分を出すタイプじゃないし……もういい歳なのはわかってるんだけど…」 「優しい、先生です。 すごく優しいです。 あと、梅干しのおにぎりをよく食べてます」 穏やかに頷いたその顔は昨日の明るさを残しつつも子を心配する色が見える。 それは古志にも解った。 「僕達生徒にも丁寧な口調で話してくれて、対等にいようとしてくれます。 解らない問題を質問にいけば、自分の仕事そっちのけで根気よく教えてくれますし、それで他の先生に小言を言われいても『君が謝る必要はありません。解るまで教えるのが僕の最優先の仕事です。』って笑って言っちゃうんです。 あ、部活中見掛けただけですけど…でも、そんな先生、相川先生以外に知りません」 「そう…」 相川の母親は安心したようにそう呟くと僅かに口角をあげた。 母親が知っている息子のままだったのか、それとも相当心配だったのかは判からないけれど、話して良かったと思う表情をしている。

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