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第52話

「お茶、淹れますね。 先に食べててください」 「ありがとうございます」 ガサガサとコンビニ袋からおにぎりを出す古志に背中を向け、小さな冷蔵庫の上でお茶汲みをしているとふと手元が陰った。 「光輝さん」 ふわふわと甘いにおいが自分を包む。 自分には不似合いな人工のにおい。 だけど、好きなにおい。 「え…あ……あ、の…」 「ね、光輝さんと俺って付き合ってんだよね?」 「つき…っ」 カッと身体中が熱くなる。 付き合ってる… 付き合って… 古志くんと、僕なんかが… 「あ…の……、あ…」 上手く言葉が出ない。 するりと腹を撫でる若い手に意を決する。 何度も頭を縦に振って意思を伝えた。 「じゃあ、もう呼んでるけど光輝さんって呼んで良い?」 「は、はい…」 「光輝さん」 「はい、」 「俺の事はなんて呼んでくれるんですか」 「古志くん…」 茶葉のパックを手にしたまま小さな声で名前を呼ぶと、背後の空気が変わった。 あ…、古志くんは嬉しい時こうなるんだ… 「薫って呼んでくれないんですか?」 「……はず、かし…です」 楽しそうに笑う古志は相川の耳の裏に吸い付いた。 「っ!!」 「少しずつで良いから俺に慣れてください」 「…が、がんばります」 「がんばって。 楽しみにしてます」

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