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第54話

漸くお茶を淹れ終え、相川はホッと胸を撫で下ろすのと同時に事務椅子へ腰掛けた。 「また梅干しのおにぎりですか?」 「え、はい」 「光輝さんのお祖母さんが漬けた梅干し美味かった。 分けて貰えば良かったな」 実家に泊まっている間、朝飯に出された梅干しをいたく気に入っていた古志は美味かったと嬉しい事を言ってくれる。 祖母が毎年漬ける梅干し。 小さい頃から頭り前に口にしてきたそれを古志も気に入ってくれた事、そして祖母の梅干しが美味いと褒められた事が当たり前に嬉しい。 相川は穏やかな笑みを称えた。 「たまに帰るので良かったら分けて貰ってきますね」 「マジ! 嬉しい!」 古志くんは不思議な生徒です。 僕みたいなダサくて地味な同性を好きだと言ってくれます。 キラキラした笑顔は自分とは真逆で、眩しくてしかたがない。 だけど、彼はまだ子供で不安定さもある。 そのグラつくバランスは寧ろ古志を魅力的に見せる。 夏の太陽みたいで眩しくて、だけどみんなが手を伸ばす明るい星。 ふへっと笑う相川に気付いた古志はまたキラキラした笑顔をみせた。 「今度は連れて行ってくださいね。 置いてきぼりは勘弁してください」 「はい」 痛い所を突かれ眉を下げる相川の向かいで、古志はいただきますとサンドイッチに手を伸ばした。

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