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第55話
クーラーから吐き出される冷風は、どんぐりに合わせて快適な温度に設定されていた。
学校への行き帰りだけ保冷剤や冷感シートで我慢して貰っているだけに自宅ではしこたま甘やかす事に決めている。
と言うか、生物部の活動の為に迎えた子だが生物室に置きっぱなしにする訳にもいかず相川が自宅でも面倒をみ続けていた。
「どんぐり、水飲んでんのか?
毛皮着てんだから熱中症になんなよ」
だけど、今は古志も部屋に入り浸り面倒をみてくれている。
日焼けした畳の上でどんぐりと遊んでくれている優しい古志。
確かに動物は毛皮を着ているし、元々育った国や地域の違いで適温が違う。
どんぐり達は中東の生き物で、あたたかく乾いた気候があっている。
じめじめする日本では対策をしてあげなければ一緒に暮らすのは難しい。
人間も動物も、互いの違いを理解し歩み寄らなければいけないのは同じだ。
それをきちんと理解している古志に相川は声をかけた。
「古志くんもですよ。
麦茶より甘い物の方が良いですか?」
「そんな子供じゃないですって」
ゲージの前から漸く机の上に移動してきた古志は麦茶をごくごくと飲んだ。
ほら、飲めるでしょ、と言わんばかりの姿が可愛い。
「お利口ですね」
「光輝さんからみたら俺なんてまだ子供なんだろうけど、俺だってそんな子供じゃないですよ」
「まだ甘えて良い歳ですよ」
「ふぅん」
まだ麦茶の残るグラスを机に置くと、その手で相川の手首を掴んだ。
「こ、古志く……」
「甘えても良いんですよね」
「それは……」
「なら、甘えさせてくださいよ
相川せんせ」
最近の子は、早熟なんて言うが熟すのが早すぎます。
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