41 / 533

3

何だこいつらは、何で俺の名前を知ってるんだ。 「あ、こちらはカズマとイロハ。僕の友だちなんだ!」 固まってる俺に気づいたのか、慌ててあいつが紹介する。 「初めまして佐古くん!どうぞよろしくね?」 「よろしく、佐古」 「………」 いや、よろしくする気ねぇし。 (つかどーなってんだ……) テーブルに置かれたたくさんの食器。 台所にあるいろんな種類の鍋や食材。 なんだこれは? 「…ここで何してんだお前ら」 「ふふっ。実はね、今からここで〝料理教室〟するんだー!」 「……は?」 楽しそうにニコニコと答えるあいつ。 言ってる意味がわからない。 「そうなの! おれたち3人とも得意料理が違うからね、みんなで教え合おうってことになって! あ、おれはお菓子が得意なんだよー!」 「俺は和食で」 「僕が洋食なんだよね」 (いや、訊いてねぇけど) まぁでもなんとなくは集まってる理由は分かった。 要するにこの部屋であいつがダチたちと料理教室?をやるってことだよな。 (俺関係ねぇな) 「ん? 何処行くの佐古くん」 部屋行くかと回れ右した俺を、あいつが止める。 「佐古くんも参加するんだよー。 せっかく今日早く帰ってきたんだし、一緒にしよう?」 「は?」 「そうだよー!おれたちと一緒にしよう!!」 「佐古はどんな料理が得意なんだ?」 わくわくした様子の3人。 (何でナチュラルに俺が参加する流れになってんだ…) 意味わかんねぇ…… 「…悪りぃけど俺やんねぇし、部屋行くかrーー」 「んんん??」 「っ、」 (くっそ…お前その笑顔ずりぃぞ!) あいつに一昨日見た黒い笑顔を浮かべられて、たじたじになってしまう。 「っ、俺料理できねぇからっ!だから得意料理とかもねぇし」 「それなら尚更一緒にやろ!ほら、僕佐古くんのエプロンまで用意してるんだよー!」 は? 俺の分の、エプロン…だと…… (ま、さかチューリップとか付いてねぇよな!?) バッと広げられたそれを念入りに見ると、ただのシンプルなワインレッド。 よかった、何も付いてねぇ。 「あれ? やっぱりチューリップ付けて欲しかった?そっかそっか!実は丁度これと一緒にチューリップのアップリケ買ったんだよね。 今からアイロンで付けてこよっkーー」 「っ、やめろ!」 呪いのような恐ろしいことを言われ、慌ててあいつの手からエプロンをもぎ取って。 (っ、しまっ) 思わず、受け取ってしまった…… 呆然とあいつを見ると、優しく笑っていて。 「ふふっ、良かった受け取ってくれて。 ーーそれじゃぁ始めよっか」

ともだちにシェアしよう!