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「僕の、体の事……?」 「そうだ。先ずは担任として、お前に何ができて何が出来ないのかを教えて欲しい」 出来れば食べ物のアレルギーとか、そういったのも全部教えてくれ。 メモを取るらしくpcを片手に俺と向き合った。 その瞳は、とても優しくて真剣で。 (ーー嗚呼、この人は) 佐古くんと同じように、外見は置いといて内面は凄く優しい人なのかもしれない。 がっつりホストだけど、いい担任なのかも。 改めて、俺も真っ直ぐ先生の方を向く。 「わかりました、先に体調面についてお話ししていきますね。僕はーー」 ハルのことを思い出しながらゆっくりと話していく俺に「成る程な」と相槌をして、先生は質問をしてくれて。 (真面目な人だな) ちょっとだけ、信じてみてもいいかもしれないと思った。 「ーー以上か?」 「はい」 「後で『実は……』とか、んな事言わねぇだろうな?」 「あははっ、言いませんよ。本当にお話しした事で全てです」 そうか、ならいい。 じゃぁこれで終わりにすっか。 パタン、と先生はpcを閉じた。 「ぁ、あのっ」 「ん?」 「有難うございます。僕のこと気にかけてくださって…」 (初日から、お時間頂いちゃったな……) 外を見ればもうすぐ夕方近くなりそうだ。 もう先生たちの勤務時間は終わっているだろうに、梅谷先生は付き合ってくれている。 「はぁぁぁっ、たく、お前なぁ……」 「わっ」 ガシッと頭を掴まれる。 「いい加減に自分が小鳥遊って事自覚しろよな?お前に万が一があったら俺たちがやべぇんだよ、わかっか? それにだ、俺はこう見えてちゃんと〝先生〟なんだよ。自分のクラスの生徒くらい把握しときてぇんだ」 掴んだ俺の頭をわしゃわしゃかき混ぜながら「おわかり?」と訊かれる。 (確かに小鳥遊なら、ハルに何かがあったらこの学園を敵に回して戦いそうだ……) この学園の人たちも、どうやらそれを分かっているらしい。 「わ、わかりました! 何か異常があった時は直ぐにお知らせしますからっ」 「おー頼むぞ。最悪お前のカードキーに着いてるボタン押せばいいから」 わかればよろしい、と、頭の手を退けてくれた。 「ぁ、それについて質問が。このカードキーって、ボタン押すと誰のスマホが鳴る仕組みなんですか?」 「あぁ、これは担任の俺と各学年の学年主任の先生方・保健室の先生・寮監・後はと風紀委員長だ」 「……は?」 先生達と寮監さんは分かる。 風紀もまぁまだ分かる、雰囲気的に。 (どうして、生徒会長も……?) 俺の疑問が顔に出たのか、梅谷先生が「あぁ」と話してくれる。 「何かお前のカードキーを作る際、会長が言ってきたんだとさ。 『生徒に関わる管理は風紀と同様に我々もしているから、そこに俺が入るのはさも当然だろう』とな」 (………な) なんて意見だ… ただ入りたかっただけだろそれ、絶対。 ……と言うことは、これを押したら生徒会長が俺の処まで来てくれる? いやいやいや、無理。 (絶対押すもんか) 本気で万が一って時しか押さないようにしよう。 いつもはイロハ達と一緒にいるから、きっと大丈夫だ。 (あのスピーチを聞いた直ぐ後だからか? あいつの手なんざ借りたくないと本気で思ってしまう……) はぁぁ…全く……小鳥遊という名字に、婚約者に…… (やらなきゃいけない問題ばかりだ……) 「おい小鳥遊。そこで百面相してるのもいいが俺は帰るぞー」 「ぁ、すいませんっ、僕も帰ります!」 既に帰る準備を済ませて、先生がドアの所で待っててくれていた。 「帰りは何処も寄らねぇだろ?寮まで送ってやるから着いて来い」 そう言って俺の隣を歩いてくれる先生は、 それはそれはゆったりとしたスピードで。 何だかイロハ達と初めて出会った時を思い出して、クスッと笑ってしまった。

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