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「うわぁ……広い………!」
(シャンデリアがいっぱいある…何ここ本当に学校?
ホテルとかの間違いじゃなくて??)
煌びやかなシャンデリアと、沢山の人のざわつきと、忙しなく動くウェイターさんと(何で学校にウェイターいんの? 何なの??)
すごい熱気に、思わず入り口で立ち止まってしまう。
『ぁ、あれ見て! 小鳥遊様だよ!!』
ビクッ
『本当だ、今日は食堂で昼食取られるんだ……!』
『え、ラッキーじゃね?』
『丸雛様と矢野元様もご一緒だ…』
『凄い、今日ついてるよ!どうしよう』
『皆さん、お綺麗……っ』
その声は、じわじわと食堂全体へと広がっていって。
あっという間に、食堂内の目が俺たちの行動を逃すまいというように向けられていた。
その目が各々に言っている。
あ の 方 々 は 、 何 処 に 座 ら れ る ん だ ろ う ?
(………っ)
「ハル」
フワリ
「カ、ズマ……」
温かい温度が、背中をゆっくりと撫でてくれた。
「息を止めるな。 深呼吸しろ。
ゆっくり、ゆっくりだ」
(しん、こ、きゅう)
そうだ、落ち着かなきゃ。
(大丈夫…大丈夫……)
ゆっくり、ゆっくりと吸って吐くを繰り返す。
此処で逃げてはいけない。
ーー落ち着け、俺。
「すぅぅっ、はぁぁぁ……… ーーよしっ」
「ハル、落ち着いた…?」
「うん、ちょっとビックリしただけ。もう大丈夫だよ」
「本当に……?」
不安そうなイロハに、力強く笑いかける。
「ハル、イロハ。あそこの席が空いてる」
「あ、本当だっ!」
俺が深呼吸してる間に、カズマが席を見つけてくれていた。
「ほら、イロハも行こっ?」
「っ、でも……っ」
(そんなに不安がらないで? 俺は大丈夫だよ)
だから、そんな、泣きそうな顔しないで?
「やっぱり戻ろう」なんて言いそうな顔、しないで?
ここで戻ってしまったら、きっと提案したイロハが傷つく。
それは、凄く嫌だ。
(今回の提案、俺すごく嬉しいんだ。なのに弱くてごめんね? ちょっとだけ…本当にちょっとだけビックリしただけだから)
だから、大丈夫だよ?
コクン!と力強く頷いてみせる。
「ーーっ、わ、かった!
行こっ!ハル、カズマ……!」
俺の意思が伝わったのか、
ブンブン頭を振ってイロハも力強く笑ってくれた。
カズマの優しくて力強い手に背中を支えられながら、同じくイロハの優しい手に引かれて、空いてる席まで歩いた。
(はぁぁ…緊張、した……)
別にそんな見つめなくてもよくね?
俺どこにも行かないよ?
席に向かう間中のじぃぃぃっと注がれる視線と
座っても尚、絶え間なく注がれ続ける視線に
思わず
ポツリ
「し、視線に……殺されそう…………」
「…っ、ちょ、ハル……っ、あははっ!」
「席について第一声がそれか…っ」
「ぇ、だって!」
もっと他に言うことあるだろ。
だってそうじゃんかー!凄いチクチクするよ!?
あーもーハル面白い!お腹痛いー!
まぁ、ズレててハルらしいな。
えぇぇ、何で2人ともそんなに笑うの!?
(俺、そんな的外れなこと言った!?)
でも、心配そうな2人に笑顔が戻って良かった……
「ーーようこそ食堂へ。
小鳥遊様、丸雛様、矢野元様」
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