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番外編【プール開きの準備を。〈梅谷×櫻〉1】
[side 梅谷]
誰もいない
広い広いプールにジャバッと飛び込む。
「っ、まだちょっと寒いか……
あぁぁー…生き返る………」
今週から新学期が始まって、入学式も無事に終わり
学校全体がひと段落し、夏に向けて動き出す頃。
今日は、そんな土曜日の休日で。
毎年、俺はこの時期に体育科の先生方とプール開きの為掃除をするのが当たり前になっている。
(まぁ、体育の先生方には借りを作ってた方が後々楽なんだよな……)
『梅谷先生すいません! 俺たちこれからちょっと会議が入ってて…』
『あぁいいですよ、もうほぼほぼ終わったも同然じゃないですか』
『今年も有難うございます!本っ当助かりました』
鍵はココに置いとくんで、もう後は好きなだけ泳いで出て来てくださいね。
はーい有難うございます、おつかれさんですー。
お先失礼しまーす!
慌ただしく先生方は先程出て行った。
そうして今、広いプールを1人占領している。
(やっぱ1人は落ち着くな)
プールに浮かび、静かに目を閉じた。
あぁー、やっとひと段落つけた……
新学期が始まってこんなにバタバタしたのは初めてなんじゃないかってくらいに、とにかく今年は忙しい。
(あれもこれも、全部あいつが原因だ)
〝小鳥遊 ハル〟
まぁ、今回は俺が立候補してわざとあいつの担任になったんだが、まさか此処まで忙しくなるとは想像もしていなかった。
かの有名なTAKANASHIグループの、しかもひとり息子で。
生まれつき体が弱くパーティーにも参加したことない箱入りで。
俺の大事な大事な恋人の部屋の鍵を開けることができ。
この学校じゃ上の位の、中学時代はいつも2人でいた丸雛と矢野元の処へ早々あっさりと入り込み。
おまけに同室にした佐古をも引き入れて。
そして、
昨日、生徒会長である龍ヶ崎レイヤの婚約者だと発覚し。
更に何と異例の1年で生徒会役員に任命されるとか。
「はぁー、まーじでフルコンボじゃねぇかよ……」
(なんなんだあいつは、これが俗に言うトラブルメーカーってやつなのか?)
台風の目の様に、これからもあいつの周りでは様々な事が起きるんだろう。
(ったく…だりぃな……)
はぁぁぁと息を吐く。
「クスクスクスッ。
貴方は本当に何処でもため息ですね」
仕事熱心なのもいいですが、少し肩の力を抜いてください。
「っ、は………?」
バシャっと思わず声のする方を向くと、愛らしい恋人が大きめのパーカーを羽織って笑っていた。
「ふふふ、作戦成功ですね」
「おまっ…何で此処にいんだ……?」
「あなた方がプール掃除をしているから、差し入れとタオルを持って行こうかと。そうしたら、道中で体育科の先生方が会議で帰られるのが見えたので今は貴方1人なのかと思いまして……
ついでに、私も着て来ちゃいました。 水着」
「………は?」
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