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「………そろそろ落ち着いたかな?」 「っ、ひくっ……ぅんっ」 「そう、良かった。ほらアキ、顔見せて?」 わーお顔ぐずぐずだー!もぅ、こっち向いて? ハルが枕元にあるふわふわのタオルで、ぐちゃぐちゃの顔を優しく拭いてくれる。 「よしよし、っと…… さて、もう大丈夫かな?」 「ぅ、ん、大丈夫! ハル、帰宅早々泣いちゃってごめんnーー」 「はいストーップ」 モゴッ!とタオルで口を押さえられた。 「もー何でアキが謝るの?アキ全然悪くないのに」 「んん!んーんー!」 「だっても何もありませーん。はぁぁぁ、全く…… 大体、謝るのは僕の方だyーー」 パコン! 「あいたっ!」 ハルの頭を思わずポカッと軽く叩くと、びっくりしたのか口からタオルが外れる。 「ハルこそそれ禁止!ハル何にも悪くない!!」 「だ、だって…僕がこんなんだからアキが寂しい思いを……」 「違う!!この件は自分で決めたことだから!」 〝アキ〟って名前を呼ばれなくても。 ハルの昔話をみんなにしてる時、その思い出の中から俺を消して話さなきゃいけなくても。 学園の事が全てが整い終わってハルと入れ替わって、俺が一人ぼっちになっても。 ーーそれでも。 「俺が自分で決めた事だから、ハルは悪くない」 「アキ……」 「だからハルももう謝らないこと!分かった?俺ももう謝らないから。な?これでおあいこにしよ?」 「………っ、わかった……」 「もーハル!しゅんってならないで? はい、顔あーげーるー!! でも、まぁそれにしても……」 「「謝るタイミング、一緒だったね」」 「………っ、はは!」 「………っ、ふふっ」 笑うタイミングもピッタリ一緒だ。 「クスクスッ、あーもー僕たちやっぱり双子だね!」 「そうだな。本当ピッタリだった!」 「あーぁ、何かもう今のでさっきのどっか行っちゃったよ。 ねぇアキ、この2週間で起こったこと教えて?」 「ふふふ、うん! 色んなこといっぱいあったんだよ! そうだなぁ…… じゃぁ、先ずは〝友だち〟の話からーー」 「〝イロハ〟と〝カズマ〟ね。 あと〝佐古くん〟」 「そうそう!」 覚えるように、ゆっくりとハルが名前を唱える。 「ふふふ、流石アキだね!みんな良い人そう。会うの楽しみだなぁ……」 「楽しみにしてて!すっごい良い奴らだから!!」 「うんっ! それにしても丸雛かぁ… 懐かしいね」 「そうだな。俺もイロハに丸雛って言われた時凄い懐かしかった」 「だよねだよね! お母さん達がよくお土産で買ってきてくれて半分こしたよねぇ」 「そうそう!ハル絶対半分こにするの譲らなかったよな」 「当たり前でしょ!アキと一緒に食べたかったんだから!あぁー本当懐かしい……あの和菓子半分にするのに特に苦労したよね、あれ、あの、」 「「七夕の星飾り乗ってるやつ」」 「「……………っ」」 「クスクスクスッ、もーアキぃ今の絶対ワザとでしょ」 「えー何でだよ! イロハに言われた時俺も真っ先にそれ浮かんだのに」 「そうなの? 」 「当たり前だろ!? ちゃんと全部覚えてるもん!!」 「ふふふっ、僕たちいっぱい思い出があるね」 「うん、いつも一緒にいたからな」 「一緒、か…… そうだね。 ふふ。 ぁ、ねぇねぇ! 婚約者の方はどうだった!?」 「あぁぁぁ……あいつな…………」 「??」 はぁぁぁ…と大げさに溜息をつく俺に、頭に〝?〟を浮かべたハルが興味津々という様に話を促してくる。 「あいつはーー」 コンコン 『アキ様。 奥様と旦那様がお呼びです』 召使いの声が、部屋に響く。 「……母さんたちが呼んでるみたい。 先に2人のとこ行って話してこようかな」 「……うん、そうだね」 「ふふっ、ハル落ち込まないで? 終わったらまた来るから。 そしたらまた話の続きしよ?」 「うんっ、わかった。 待ってるねアキ」 「おぅ! じゃぁ行って来るーー」

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