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(は、〝心〟?) 何言ってんだこいつら。 『そんなもの、あっても何の意味もねぇだろ』 大事なのは内側じゃない、外側だ。 人は、見た目の印象で90%が決まると言われている。 目に見えるものを信じるし、目に見えるものへ真っ先に飛びつく生き物だ。 内側とかいう目に見えないものをいくら磨いたって、所詮は何の意味もない。 経営者は〝己の欲〟で事業を失敗する奴が多い。 〝欲〟とは〝己の心〟から生まれる。 (俺は、将来〝龍ヶ崎〟を継ぐ者だ) そんな俺に、内側なんざいらない。 『はぁぁ……全く、此処まで昔の私に似るとは。 お前はやっぱり私の子だよ、レイヤ』 『あ?』 『ふふふ、まぁ良い。そんなお前に、今日はひとつお知らせがあるんだ。 ーーレイヤ。〝小鳥遊〟の子と婚約しなさい』 『……なっ』 『実は前々から小鳥遊家とは提携を結びたかったんだ! あの企業は面白いからなぁ。今回先方がそれに応じてくれてね、お前と小鳥遊の息子さんの婚約を約束に晴れて結ぶ事となったんだよ。 いやぁ、実にめでたいと思わないかい?ねぇ母さん』 『そうねぇ、あなた!』 (婚約………) この世界では、結婚は所詮会社同士の提携等に使われる。 子どもは政の道具。 だから、男同士だろうが別に珍しいことではない。 学園の奴らが知ったら何て言うだろうか。 寄ってたかって、俺と結婚したいだの吠えてた奴らだ。 (ククッ、そいつらの顔を見るのもまぁ悪くねぇか) それに、これは企業の経営者同士が決めた話。 子どもの俺が口を出す事は決して許されない。 (運がいいな、小鳥遊の息子は) 誰もが欲しがるこの〝俺〟と、婚約できんだからよ。 だが、 現実は、俺が予想してたものとは全く違っていた。 幼さが残る綺麗な顔立ちに、サラサラとした色素の薄い髪。 日に焼けていない肌、平均より小さく細い身体。 成績も優秀で容姿端麗、そして龍ヶ崎と並ぶほどの権力を持つ〝小鳥遊〟という姓。 俺が今まで見て来た奴の、どいつにも勝る外側を持つ奴。 (こいつなら俺の隣にいてもおかしくねぇな) 外側だけ見て俺は今回の婚約に満足した。 なのに、そんな奴の口から。 『僕たち此処で初めて顔を合わせたんですよ? とてもじゃないけど、これから生涯を共にする婚約者とは思えない』 (………な) 何 だ こ い つ は 。 『僕は貴方の事をよく知らない。貴方も僕のことをよく知らない。 だから、そういうのは先ずこの学園でお互いのことをよく知ってからにしませんか?』 おいおいおいおい、何を言っている? お前はの人間じゃねぇのか? そんな外側を持っていて、何言ってんだよてめぇは。 (俺は龍ヶ崎だぞ!? お前は小鳥遊だろうが、訳のわかんねぇこと言ってんじゃねぇよ!) こいつはおかしい。 経営者同士が決めた絶対的な取引を真っ向から拒否して、〝互いを良く知る〟ということに重きを置き、時間を割きたいらしい。 (アホじゃねぇのか……?) んなもん知ってどうする? この世界において、所詮大切なのは外側だ。 何故、こいつはそんなに内側を見たい? 『貴方、薄っぺらい人ですね』 去り際に言われた、親父と全く同じ言葉。 (たった一瞬居ただけで、分かられるもんなのか?) あいつの洞察力か、それともーー 『っ、ははっ』 (………いいだろう) 此処までコケにされたのは、初めてだ。 どうやらあいつは、これまで俺の周りにはいなかった種類の人間のらしい。 ーー面白い。 分からせてやるよ、この〝俺〟を。 ポソッ 『ねぇ見てっ』 食堂で俺を見ていた誰かが、囁いた。 龍ヶ崎様が、凄く楽しそうに笑ってらっしゃるーー

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