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(仕事を、しに来ない?)
いや、俺がどの時間に来てもこいつにしか会わなかったから不思議だとは思ってたけど、まさかそういう事だったとは……
「どうして来なくなったんですか?」
「あぁ? 知らねぇよそんなん。まぁ、あいつらが無能だったってことだ」
「無能?」
クワァッとだるそうに欠伸する会長サマを見る。
「あいつら、これだけの書類終わらすのにどんだけ時間かかったと思う? 俺が同じ山5つ終わらすくらいだぞ、5つ」
書類には、それぞれ連携しないと終わらないものがある。
会計が書いた書類を書記が見て、それを副会長が見て、最後に会長が見て判子を押したりとか…そんな感じのもの。
だから1人がガンガン効率よく終わらせても、ペース配分が同じでないと意味がない。
「あいつらの要領の悪さには付き合いきれねぇんだよ、ったく……」
「よ、要領って……」
(生徒会に入るくらいだからきっと仕事できる方なのに)
多分この人がずば抜けて天才だからだ(認めたくないけど)
だから皆んなついていけなかったんだろうな。
「でも、確か副会長たちって3年生ですよね? 先輩方に面と向かって〝要領悪い〟って言ったんですか?」
「あぁ、言ったな」
(お、おぉう……)
それはまた…こいつには怖いもん無いのかよ。
「〝要領が悪すぎる。お前らのせいでこの時間に終わる仕事が終わんねぇ。何やってんだ?〟って言ったら、それ以降来なくなったな。全く、打たれ弱えぇ奴らだ……
まぁ、元々あいつらは俺のこと良く思ってねぇみたいだったから、別にどうでも無いけどな」
「え?何で…」
「んなの、俺が2年から生徒会長になったからだろ。それであいつらのプライドが折れたってことだ。元々次会長になるのは今の副会長だったからな」
(成る程……)
もしかして、今回会長の秘書に呼ばれたのって今まで生徒会の仕事全部1人でしてたから?
(単なる俺への嫌がらせだけじゃ無かったのか……)
「ククッ、お前の方が遥かに効率いいぜ。あいつらより」
「流石は小鳥遊だな。俺と同じレベルだ。婚約者はこうで無いとな」とニヤニヤして見てくる会長をジトォ…と睨む
「……それで? 会長サマは来なくなった3人をどうするおつもりで?」
「あ? 何言ってんだ、別にどうもしねぇよ?」
「えっ?」
普通だったら、無理にでも迎えに行ったり辞めさせてもっと他にいい人入れたりとか、何かするでしょ。
「は?誰がそんなだりぃことすんだよ。俺は現状に満足してんだぜ? 誰が不満足だと言った」
「え、満足してるんですか…?だって、はっきり言って3人はサボっているのと一緒でしょう? 会長の頑張りで3人の面子が保たれてるっていうのを考えると、イライラしませんか?」
「あ? 苛々…?
何言ってんだ? 別に俺は何も感じねぇけど。
だってそうだろ、あいつらがここで仕事してるより遥かに効率よく業務が回る。はっきり言って俺1人で全部する方がずっといいんだよ。俺もこれくらいの仕事別に難しくはないし、ちょっと時間がかかるくらいで苦はない。
それに、あいつらもそれぞれに良いとこの家柄の癖して、この効率の悪さとサボりだ。こういうのはきっと社会に出てから大損するんだろうぜ。ククッ」
………嗚呼、この人は。
(そうだった、この人は薄っぺらくて空っぽで天才で、
いつも1人なんだ)
「ーー会長サマ」
「あ?」
「副会長たちを、直ぐに呼び戻してください」
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