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「ハル……っ、おい、ハル!」
「っ、はっ…はぁっ……はっ」
カタカタと小刻みに震えている体。
目は虚で、まだ俺のことを捉えてない。
呼吸も荒く、過呼吸寸前のような状態で。
「っ、ハル!! おい!返事をしろ、俺を見やがれ!!」
(何が、あったんだ)
「ハル!ハル!! っ、ハル!!」
両手でこいつの薄い肩をガクガク揺らす。
「ーーっ、ぁ……」
「ハル!?」
「…さこ、くっ?……なんで…」
「はぁぁ……ったく、何でじゃねぇよ。 お前が6限になっても戻ってこねぇから迎えに来てやったんだろうが」
「ろく…げん……」
(良かった、気がついたか)
ぽけーっとした顔で見つめてくるこいつの頭を、優しく撫でてやる。
「おい、大丈夫か?」
「へ……?」
「へ?って……お前さっきまで過呼吸寸前だったんだぞ。 何でこんなとこ座りこんでんだ」
「? ーーぁ、っ」
ぼぉっと周りを見回して生徒会室のドアを見た瞬間、再びこいつの体がカタカタと震え始めた。
「ハ、ハル…おい……」
「っ、ちがっ…これは、なんでもなくて……だから…っ」
必死にシャツの前を手繰り寄せてるのに、違和感を感じる。
「ハル、シャツどうしたんだ」
ビクッ
「っ、な、なんでも…なっ……」
「嘘だな。見せてみろ」
「ゃ、佐古く…だめっ」
震えて力のあまり入っていない手を退ける、と
「ーーっ!」
そこから出て来たのは、ボタンが引きちぎられたように糸が付いている、はだけたシャツ。
そこから覗く……恐ろしいほどに白い肌。
一瞬で、何があったか理解した。
「ーーおい」
「っ…、さ、佐古くっ」
「これは誰にやられた」
会長か? それとも副会長? 書記? 会計?
それとも、全く別の奴か……?
「庇うな。誰にやられたんだ」
「……っ、ぁ、ぁの…こ、れは……っ」
(言う気がねぇ、か)
「やった奴は、まだこの中にいんのか?」
ビクッ
「っ、」
いるんだな。
ゆらりと立ち上がる。
(ち、この扉カードがねぇと開かねぇのか)
蹴り壊すかな。
頑丈そうだが、壊せない事は無さそうだ。
キュッ…
「…………あ?」
勢いをつける為に扉から離れようとした俺のシャツを、あいつに弱々しく引っ張られた。
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