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「っ、ぅ」 「んだてめぇ、庇うのか?」 ブンブンッ 「ちがっ、そんなんじゃ……」 「なら何だこの手は。 離せよ」 「ゃ、やだっ!」 (あぁ? 何なんだこいつは) 何がしたいか全くわからん。 「離せ」 「だ、だめっ」 「………何でだよ」 「だって、離したら佐古く、扉…壊しちゃうでしょ……?」 「あぁ? ったりめぇだろうがそんなん。 お前泣き寝入りする気か?」 こんなことまでされといて、中にいる奴が許されるわけがない。 なにより、 「俺が、許せねぇだけだ」 (ーー腹が立つ) ハルを苦しめやがって。 こいつはこんな事される為に生徒会に入ったんじゃねぇ。 ギュッ!と更に強くシャツが引っ張られた。 「っ、泣き寝入りは、ちがう!」 「…あ? お前やり返したのかよ」 (その細い腕で? 人傷つけた事無いだろうにできたのか?) 「言葉でっ、殴った!」 「………は? 言葉??」 コクッコクッ 「ん、ぅん!」 (言葉で、人は殴れんのか?) 「ガツンて、言ってやった! からっ、も、大丈夫…!」 んな自信満々に、震えながら言われてもなぁ…… 「何言ったんだ?」 「あの人が、1番傷つく、こと……」 (1番傷つくこと、か…) それは確かに、相当痛いかもしれない。 「凄く、傷つい、てた…そんな顔、してた…… だから、も、いい」 「…………そう、か」 言葉で殴るなんて考えてもみなかったな。 まぁ、こいつらしいと言えばこいつらしいか。 (あー……、何か頭冷えた) 取り敢えず、今優先すべきは扉の中の奴じゃない。 カクカク震えてるハルの方だ。 (こいつをここに放って俺は何しようとしてたんだ) 情けねぇ…… 「…? 佐古、く?」 「おい、保健室行くぞ」 「ぇ、」 未だに座り込んでいるハルを横抱きにしようと膝をつく。 「ぁ、ま、待って!」 「あぁ? んだよ、まだ何かあんのか?」 「ほ、保健室はだめ……っ」 「…? 何で」 「っ、部屋が、いい。 お願い、佐古くん……」 (あぁ? だから何でだよ) 普通だったらこのまま保健室だろ。 どっか怪我してっかもしれねぇし、体調面とかの検査もしてもらわなきゃだろうし。 「ぉ、おねがぃ……佐古、く…」 (っ、だから、んな目で見てくんな……) あぁぁくっそ! 「ゎ、っ」 「被ってろ」 バサッとシャツを脱ぎ捨ててガバッとハルの頭からかけ、そのまま横抱きにする。 (くそ、軽いな……) 何でこいつがこんな目にあわなきゃいけねぇんだ。 「……部屋まで連れてってやるから、大人しくしとけ」 「! ぁりがと……っ」 安心したように寄りかかってくる体温を感じながら、寮へと続く道を急いだ。

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