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部屋へ着いて、抱えたままゆっくりとソファーに座る。
「ぁ、部屋…?」
「着いたぞ」
「ありがと、佐古く……っ?」
離れていこうとするハルを、逃さないよう抱き締める。
「? 佐古、くん…? どうした、の?」
ポソッ
「………んで」
「え?」
「何で、お前がこんな目にあわなきゃいけねぇ」
歩きながら、ずっと考えてた。
こいつには1ヶ月ちょいでこんなに色々なことが起こっていて、それをこの細い体ひとつで完璧にやり遂げているのに。
(どうして、こいつばっかりが苦しいんだ)
おかしいだろ、絶対。
「……ふふふっ」
「? …んだよ」
「佐古くんに心配されて、嬉しっ」
震えがまだ治ってないのに、俺の頭を優しく撫でて来る。
……嗚呼ほんと、お前はいつも他人を優先する。
いつもいつも自分の事は後回しで、俺や丸雛たちの事ばっか見てやがる。
今だって、まだ自分が震えてんのに。
何で、
「ーーなぁ。お前は、何をそんなに急いでんだ?」
ピタ…と、撫でていた手が止まった。
「何で、そんなに急ごうとする。何か理由があんのか?
ーーーー何を、抱え込んでる」
ここ最近の違和感が、口から出てくる。
お前は、この華奢な体の中に…心の中に、一体何を隠してんだ?
(俺や丸雛たちじゃ、こいつを支えてやれねぇのか……?)
「ーーねぇ」
いつのまにか、腕の中の体は震えが止まっていた。
「どうして、僕が急いでると思ったの?」
「どうして…って……」
(聞かれても、曖昧すぎて答えれねぇな……)
日常で感じるふとした疑問が、溜まっていった的な。
だから明確な〝何か〟は無くて。
「…………」
言葉が、出てこない。
ポソッ
「やっぱり、佐古くんは凄いや」
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