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sideアキ: やっぱり、佐古は鋭い

シャァーー…………… (やっぱり、佐古は鋭いな) 頭からシャワーを被って暖かい湯気に包まれる。 『お前は、何をそんなに急いでる』 そう言われて、正直震えてる場合じゃなかった。 (はぁぁったく…やっぱ頭いいよなぁ……) あんだけ外行ってても成績は出席点以外満点だもんなぁ…… それに、多分あいつは外に行ってたから違和感に気付いたんだと思う。 (離れて学園のこと見れるからな。そりゃ気づくか……) うぅぅ、危なかった。 『急いでる』って指摘されて佐古に言ったのは、本音の約40%くらい。 残りの60%は、絶対言えるはず無い。 (保健室に関しても、まぁイロハたちや梅谷先生とかに迷惑かけたくなかったって言うのはあるけど、) でも1番はやっぱり〝保健室からの連絡が家へ行く事〟で。 こんなミスしてたら、きっと母さんたちに怒られちゃう…… いや、もう怒ってさえくれないのかも。 呆れられちゃうかな…… (もしも、もしも…そうなってしまったら……) 俺はもう、ハルの側にいれなくなるかもしれない。 ポソッ 「そんなの、やだよ……」 それだけは、絶対嫌だ。 (俺には、ハルだけなんだ) 今の俺があるのは、全部全部ハルのおかげで。 ハルが、俺の全てで。 だから (、直ぐに乗り越えてやるんだ……っ) 握られた手首にできてる痣を見て再び震えだす体を、自分で抱きしめた。 (正直、怖かった) (嘘、全然怖くないよ) 「ーーん、上がったか。こっち来い」 「? どうしたの佐古くん」 リビングに行ったら、佐古がソファーで手招きしてる。 「脱げ」 「……は?」 「? 何考えてんだ、脱がねぇと手当できないだろうが」 ポンポンと机にある救急箱を叩かれる。 (あ、そう言う事か、びっくりした……) 「でも、僕本当に何もされてないよ?」 「いーからとっとと脱ぎやがれ。お前はすぐ隠すからな…自分で確認する」 (ん、あれ? 俺ってもしかして信用ゼロ…ゼロなの……?) 「 は、はぁい……」 パサっと上半身だけ裸になって、佐古に見せた。 「…………ん。身体傷ついてねぇな」 「もーそう言ってるじゃん。本当にシャツ破かれただけなのっ! ちょっとは信じて?」 「あぁ?何言ってやがる。手首だけ痣できてるだろうが。ほら、湿布貼るぞ」 ギクッ 「うぅっ……」 「ったく…ほら、見せてみろ」 仕方なくおずおずと見せると、佐古の手が器用に湿布と包帯を巻いてくれた。 「………ん。いいぞ」 「ぁ、有難う…手際いいねぇ」 「まぁな。外行ってっし」 (あぁそっか、成る程……) 佐古やんちゃしてるからなー、慣れてるのかなー。 そう考えてる間にも佐古にテキパキと服を着せられて。 「ーーおし。 さぁハル?」 「っ、な、何でしょうか…?」 (何で笑顔なんだよ!) 「取り敢えずここ座れ。 な?」 「は、はぃ……」 ポンポンと佐古の隣を指示され、本能で正座して座る。 「ん、いい子だ。 なぁハル? ーー結局、これ誰にやられたんだ? ん?」 「っ、ぃ、ぃいやっ、その……っ」 (駄目だ、佐古に言ったら絶対殴りに行かれる…!) そんな事になって万が一親へ連絡がいったら、それこそ元も子もない!! (それだけは、確実に避けたい…けど……) 「あぁ…??」 「ひっ……」 (に、逃げられない、よぉ……!) 圧倒的な『ん? 逃さねぇよ? おい、ちゃんと吐けよ?』的なオーラの佐古は、多分言わないと絶対許してくれなさそうで。 結局、俺は「これは僕のケンカだから口出ししないでね!手も出しちゃ駄目だからね!約束だから、絶対ねっ!?」と念押しして、トホホと佐古に伝えるのでしたーー

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