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sideレイヤ: これ以上俺に恥をかかせるな 1

「……………」 (外でやる事はあらかた終わったな……後は戻って業務した方がいい…が……) 今の時間は体育だから、生徒会室にあいつがいる。 「ーーっ、くそ……」 あれから、俺は体育の授業中に生徒会室へ行っていない。 業務は全部放課後か自室でやってる。 (こんな気分になるのは初めてだ……) 俺が誰かを避けるだと? 避けられることはあるが、自分から避ける事は始めてだ。 (何だ? こう、顔を合わせづらいというか……) わからない、自分の気持ちが。 俺は一体どうしたんだろうか……… 「…とりあえず、生徒会室いかねぇと仕事進まねぇしな」 体育大会がもう近いし、のこのこ体育に参加してる暇は無い。 それに、来なくなったあいつらの分の書類もやんねぇといけねぇし…… 「しゃぁねぇ………行くか」 くっそ重い足と、くっそ重い心を動かして何とか生徒会室へ向かった。 (この中には、あいつがいんのか……) 「………はぁぁ……」 ため息なんて吐いたのは初めてだ。 (くそ、手が動かねぇ) 俺は一体どうしたんだ本当に。 この中にあいつがいると思うと、柄にもなく緊張して…カードを当てる事を躊躇してしまう。 (ーーん、〝緊張〟だと……?) この俺が、緊張?? ピアノやバイオリンのコンクールや生徒会のスピーチでも緊張しなかった俺が? 「………っ、くそっ」 (緊張って、こんな感覚になるのか) 腹がたつな。 あいつに会うためだけにこんなに緊張してんのか俺は。 いつからそんなに弱くなった? (っ、馬鹿馬鹿しい……) ピッ 「貴方たちは、根性なしですか?」 ガチャ、と扉を開けて直ぐに手が止まった。 (あいつ…誰と話してんだ?) 薄く開けた扉から中を伺うと、あいつと副会長たちがいるのが見える。 (あいつら来てたのか) どうせ俺が外で仕事してんのが見えたからのこのこ来やがったんだろうな。 ったく…… 「今回の件、確かに会長は言い過ぎだと思いました。 でも、僕は貴方たちにも非があると考えます」 凛とした芯の強い声が響く。 それに戸惑ったようなあいつらの声。 「僕は、会長には好きも嫌いもありません。庇うなんて気持ちも、会長の味方に付く気も全くない。僕はどちら側にも付きません。中立の立場です。 第三者の目から合わせて頂くと、仲間のことを〝要らない〟と言い張った会長も、それ以降仕事を全部会長に任せて顔を見せない貴方たちも、どちらも悪いです」 (どちらも悪い、か……) あいつはあくまでも中立の立場で、俺にもあいつらにも自分の意見を述べている。 そして、あいつは俺のことを〝不器用な人〟だと言った。 言われる側の立場がわからないから簡単に言ってしまうのだと。 (確かにその通りだ) 俺は「要らない」や「お前にはできないだろう」なんて言葉、言われたことがない。 いつも言う方だった。 (何で、そんなに俺のことを知ってんだ?) そんな事、あいつに言ったこともねぇ。 もしかして、これがあいつの言う〝内側を見る〟って事なのか……? ポソ 「っ、くそ…なんなんだよ……」 まるで親父やお袋みたいで、腹がたつ。 あの時、俺には「もっと内側を見ろ、副会長たちを育ててやれ」と言いはって。 今、副会長たちには「もっと会長と向き合え、自分の気持ちを正直にぶつけろ」と言い。 そして、「お願いします」と綺麗に頭を下げた。 (ーーやめてくれ) お前何やってんだよ。 何で関係ねぇおまえが頭下げてんだ。 俺は、あの時お前にあんなことしたんだぞ。 ……それなのに、 (おい、やめろ) ーーこれ以上、俺に恥をかかせるな。 ガチャ 「ーー待て」 〝婚約者〟というワードで部屋から出ようとするあいつらを、扉を開けて阻止した。

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