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「…………え?」 「っ、会長……」 「ぅ、うそっ、なんでぇ~…?」 「…外、いたのに……」 (あぁ、焦ってやがる) さっきまでの威勢はどうしたのか。 俺を見た瞬間パッとあいつらの顔色が変わった。 (なんだこれは) 今まではこんなこと思わなかったのに…… そんなに龍ヶ崎に家を潰されるのが怖いのか? お前らが怖いのは、 ずっと〝俺〟じゃなく〝龍ヶ崎〟だったのか? ーー嗚呼、腹がたつな。 今、目の前にいるのは俺なのに。 そんなに龍ヶ崎はすげぇのかよ。 「ーー目を、合わせろ」 (龍ヶ崎じゃない。〝俺〟を、見ろ) そうか。 これがお前の言う〝内側を見ろ〟ってやつに繋がんのか。 (俺を、見ろよ) 思ったより低い声が出て、勢いよくバッとあいつらが俺を見る。 その目に俺が映って、ハッと笑ってやる。 「おい」 「……っ」 「お前ら、手ぶらで出て行くのか?」 「っ、ぇ………?」 「手ぶらで出て行くのかって聞いてんだよ」 はぁぁぁとわざとらしくため息を吐きながら自分の机へ向かう。 「お前らに課せられた業務、こんだけ溜まってんだけど?」 どうしてくれんの? 「ぇ、だ、だってかいちょー、自分でやるってぇ~……」 「あぁそうだな、確かにそう言った。 ーーが、気が変わった」 「え?」 「俺1人でも簡単にできんだ。でも、それじゃ意味ねぇだろ」 こういうのは、出来ない奴がやるもんだ。 出来る奴がいくらやってもしょうがない。 「お前ら成長したくはねぇのか? ずっとそのやり方で、これから社会に出て仕事していくのか? お前らのやり方は確かに効率はその辺の奴よりかは悪くはなかった。だが、俺と比べると遥かに劣る」 もっと、効率よく業務をすることができる。 「俺と業務すりゃぁいくらでもそのノウハウが盗めんのに、お前らそのチャンスを逃すのか?」 お前らの崇める龍ヶ崎のやり方だぞ? 喉から手が出る程知りたいだろうが。 「特に、副会長」 「っ、」 「本来はお前が俺の席に座る予定だったんだ。それを横から取られてさぞ不愉快だっただろうな。 だがな、それには必ず理由がある。それをお前はもうわかってるんじゃねぇのか? その決定的な差を龍ヶ崎の所為にして逃げんのかよ。 んなことしてたら、お前の先祖が泣くぞ」 「っ!!」 「他の2人も、それなりの家の出だろが。 ーーちったぁ根性見せろよ」 (逃げんじゃねぇよ、俺から) 「…………っ、これは…驚いたな……」 「?」 「貴方の口からそんな言葉が聞ける日が来るとは……これは、小鳥遊君の影響ですか?」 「あぁ? 何で今その名前が出てくんだ。こいつは今回の件に全く関係ねぇだろうが。 それより、どうすんだ? てめぇら」 「クスッ……そうですね…。 ーー2人とも」 ビクッ 「な、なに……?」「……ぅ…」 「書類を引き取りましょう」 副会長が率先して書類の束を持った。 「正直、ここまで言われて私たちの家も負けてられませんので。課されたものは自分たちでしっかり処理させていただいたきます」 〝負けてられねぇ〟ね。 (ハッ、いいじゃねぇか) 俺に勝負を挑んで来た奴は過去いない。 誰かから勝負をふっかけられんのは初めてだ。 だが、嫌な気分じゃない、逆にワクワクする。 (言葉一つで、こんなにも日常は楽しくなんのかよ) 「ですが、まだ貴方と同じ部屋で共に業務を行うのは流石に気が引けますので、自室でやらせていただきます。書類の提出などはしっかりとやりますので」 「っ、お、俺もやる~!」 「…ぉ、おれも……」 「あぁ? 待てよ」 「「「………え?」」」 「誰が溜まってる分全部持って行けっつった? 一旦全部置きやがれ」 (ったく…お前らは……) ドタッと自分の椅子に座り、置かれた書類を手際よく分ける。 「会計」 「は、はぃっ!」 「この量を、3日後に提出しに来い。お前は手当たり次第やっていくから駄目なんだ。スピードはあるがもっと先に終わらせるべき書類があるだろ。計画立ててやってけ。 次、書記」 「…は、い……」 「お前はこの量を、2日だな。お前の場合は業務が丁寧すぎる。もっとスピード感を持て。2日で終わらせて出しに来い、いいな。 最後、副会長」 「はい」 「この量、4日だ。お前の場合は丁寧さもスピード感もあるが、持続力がない。先ずは4日仕事しろ。出しに来たら次の課題をやる」 「か、かいちょー……俺たちとちょっとしか一緒に業務してなかったのに、おれらのクセ、覚えてたの~……?」 「あぁ? んなもん当たり前だろうが。この俺が忘れるかよ。 おら、分かったらさっさと出て行け」 「…っ、か、かいちょ……」 「?」 「……ありがと………」 「ーーっ」 散々厳しい事を言ったのに、何故か笑顔になって、あいつらは出て行った。

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