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sideアキ: 勉強会
「星野、そこはそうじゃねぇ。もっかいその単語自分で発音してみろ」
「ぁ、はい!」
「イロハ、ここはこの公式を使うんだ。再度入れ直してみてくれ」
「うん、わかったっ」
わいわいと勉強会が行われる、107号室。
あれから勉強会が放課後に毎日行われ、今日は俺と佐古の部屋で開催されている。
(ふふっ、みんな頑張ってるなぁ)
「……ぁ、こうじゃないですかっ?」
「合ってんな」
「できた!わかりました佐古くん、有難う御座います!」
「ん。おら、次行くぞ」
「はいっ」
(タイラも佐古も、いい感じだなぁ)
「佐古くんは、全然怖くないですっ!寧ろ優しいです!」と言い切ってくれたタイラ。
「ハル様の同室者がこんな方で良かったです」と微笑まれ、もー頭ぐしゃぐしゃに撫でていじりまくったよなぁ。
(敬語、使わなくていいのになぁ本当)
イロハや佐古も言ったのに「いえ、使わせてください!」とタイラは頑として譲らなくて。
まぁ、そうしたいのなら何も言えないけど……
(クスッ、これからもたくさん仲良くなってね)
来年は、タイラもハルたちと同じクラスになれるといいなぁ。
ハルもきっと喜ぶし、イロハたちも楽しく生活できそうだ。
もうそれくらいの時期には、俺とハルは入れ替わってるだろうけど。
それまでは、そんな楽しい未来が来るように少しでもそのお手伝いをしたい。
「みんなー、お茶とお菓子の準備できたからちょっと休憩しよっか」
「わ、ハルー有難う!!きゅーけーするーー!」
「ハル、手伝うぞ」
「ぁ、僕も手伝いますハル様っ!」
「ふふっ、いいのいいの座ってて? 僕の部屋だし後はもう運ぶだけだし。ほら、机空けて~」
コトリとそれぞれにカップを置いていって、紅茶とコーヒーのポットとお菓子を並べる。
「あれ? このお菓子って…もしかしてジンジャークッキー?」
「うんうん正解っ! 前にイロハが教えてくれたのを再現したんだ~」
「えーハル凄い!器用だねぇ!!」
「上手く焼けてるな」
「ふふ、ありがと」
(嬉しいな嬉しいなっ)
思わず「えへへ~」と笑った。
「っ!! …ぁあのっ、ジンジャークッキーって、何ですかっ?」
「ぁ、ぇ、えぇっとね!これは前にここで料理教室やってね、それでーー」
(……?)
顔を真っ赤にして、イロハとタイラがよそよそしく話してる。
「……今の、キたな」
「あぁ。久々だったな……」
「……?」
カズマと佐古くんも、クッキー片手に何やら訳の分からない事を話してて。
(…ま、いっか)
みんなの顔見てたらそんな悪い事じゃなさそうな感じだし。
「あ、そうだ。 今日終わったらみんなここで夜ご飯食べてかない?」
「ぇ、いいのハル?」
「うんうん!みんなにグラタン作ってるんだよねぇ~」
「グラタン……!!」
「タイラ、グラタン好きなのか?」
「大好きですっ!」
「わ、本当に? 良かった。佐古くんも作るの手伝ってくれてねー、一緒に作ったんだよ」
「え、そうなの!?」
「……ちょっとだけだ」
「え、それは食べなきゃ!カズマ、ご馳走になろうよ!」
「そうだな。そうしよう」
「タイラもいいでしょう?」
「そ、そんな……ハル様と佐古くんの手料理を、食べるなんて…そんなおこがましいことっ」
「クスッ、いいのいいの。だって友だちでしょ? はい、決定ー!」
「ハ、ハル様~っ」
「なぁにタイラ?僕たちの手料理…食べれないの……?」
「えぇっ!? い、いぃや、そういうわけでは…っ」
ウルウルッと見つめると、真っ赤になってしどろもどろになる。
「えぇっと……ぁのっ…そのぉ………っ」
(あー、やっぱタイラ面白い)
本当、ついついいじめちゃうんだよなぁ。
「ぁの…そ、そのっ……ぅ………グスッ…」
「はい、ハルそこまでだ」
「よしよ~し。タイラちゃん大人しくおれたちとグラタン食べようねぇ」
カズマとイロハにストーップと止められた。
「お前、本当星野いじめるの好きだよな」
「ぇっ? そんな事ないよっ?」
「はぁぁ……ほどほどにしろよ」
わしゃわしゃと佐古に頭を撫でられる。
「さて、休憩終わったら再開するぞ」
「うんっ、終わったらグラタンあるしねっ、頑張れる!」
「ハル、星野の英語そろそろ終わるから次交代な」
「はーぃ!じゃぁ次は国語だねタイラっ。ふふふ」
「……っ、ハル様に、教えていただけるなんて…っ」
「ふふふふっ」
「…………佐古。ハルとタイラ見張ってたほうがいいと思う」
「うん、おれもそう思う」
「おう、そうする………ったく……」
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