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(あーぁ…やっちゃったなぁ………) 流石に体育とか運動とかしてないと、体力も落ちるか…… 体が怠すぎて、ベンチにもたれかかって目を閉じる。 会長に、迷惑かけちゃったな。 あんなにイライラしてるのに、俺が更に追い討ちかけるように迷惑かけてしまって。 戻ってきたら、俺も今まで怒られてきた部員たちみたいに怒られちゃうのかな…… ポツリ 「…………嫌だ…な……っ」 「何が嫌だって?」 ヒヤッ ビクッ 「っ!」 「おっ……と。そのまま目、閉じてろ」 首の後ろに冷たいタオルが置かれた。 「ほら、水買って来たから持っとけ」 同じく冷たいペットボトルを持たされて、思わず自分の頬っぺたに当ててほぉっと息を吐く。 (冷たい…気持ちぃ………) 「お前、軽い熱中症になりかけてんぞ」 「ぇ……?」 (熱中症…そうか) そりゃこの炎天下の下をあれだけパタパタ小走りしまくってたら、熱中症のひとつやふたつなるか…… 「落ち着いたら、水少しずつ飲め。いいな」 「…会長……」 「? 何だ」 「すいませんでした……」 今回のは、完全に俺のミスだ。 (前もって「キツい」って言っておけば良かった……) まだ周らないといけない部活動がたくさんあるだろうに、今その足を止めてしまってて。 俺は今、会長に余計な時間をかけてしまっている。 「………はぁぁぁ……」 ビクッ 「っ、」 ため息を吐かれて、体が震える。 フワリ 「っ、え………?」 「ーー大丈夫だ」 ビックリして目を開くと、大きな手がフワリフワリと頭を撫でてくれていた。 「いい。 俺も一息つけて落ち着いた」 ひとしきり撫でてから手が離れていていき、会長も疲れたように隣に座る。 「今回の件は、風紀から共有があったんだ」 「……ぇ?」 「〝部活動の動きが怪しい。報告書が未提出の所は勿論、提出済みの部活動へも一旦聞いて回った方が良い〟ってな」 ただでさえ未提出を追わなければならないのに、虚偽報告などされてはもってのほか。 「こっちは忙しい中2人で決算書作ってんのに、それに嘘つかれるとはなぁ…… 俺も流石に頭にきた」 それで、先ずは外の部活動から一気に洗い直そうとして、今に至る。 「お前と今まで一緒にまとめていた書類、全部いちから作り直しだ」 「そうなりますね……」 (もう締め切り日まで日が無いのに、いちからか……) それは、確かに焦るよなぁ。 「ーー悪かったな、連れ回して」 「っ、ぇ、?」 あの俺様が、謝った……? 「頭に血が上って、早く書類も作らなきゃいけねぇし、つい急いじまった」 「はぁぁぁ…」と溜め息を吐いて、会長は目を閉じた。 フワリ 「っ、」 「お返しです。そのまま目、閉じていてください」 (クスッ、弱ってるなぁ……) フワリフワリとされるがままになっている会長に、ふふふと笑う。 「大丈夫ですよ。焦る気持ちは僕だって分かります」 こんな事されたらそりゃ誰だって焦るわ…… この学園にいながら、嘘の報告書を提出とか。 やった奴ら、これから社会に出てからやって行けるのかよ、本当…… 「合間を縫って作ってきた書類は全部やり直しですが、僕たちだったら直ぐに終わりますよ」 だって、会長が言ってくれたじゃないか。 「〝俺とお前は業務が早えぇから、これくらいのこと直ぐに終わるだろう〟でしょう?」 「っ、」 「ふふふっ。何を弱気になってるんですか、会長。 謝るなんて、ですよっ?」 「ーーか…… ククッ、確かにそうだな」 ニヤリといつもの笑みが戻ってきて、安心して頭を撫でていた手を離す。 「おい、小鳥遊。水飲んどけ」 「は、はぃ」 「飲みながらでいいから、これからの事決めるぞーー」 そうして、日が無い中、放課後丸3日かけて計画的に全ての部活動を洗い周っていった結果。 全部活動32個中21個という半数以上の部活動から嘘の報告書が提出されている事が発覚した。 「21か…多すぎるな………」 「そう、ですね……」 (前の生徒会は、一体何をしてたんだ?) これは多分、〝龍ヶ崎〟や〝小鳥遊〟を舐めて嘘ついたわけじゃない筈だ。 「恐らく、前々からずっとこうだったのでしょうね……」 「そうだろうな…ったく………」 ドタッと会長が生徒会室の自分の椅子にもたれかかった。 「ーー小鳥遊」 「はい」 「今から決算書をいちから作るとなると、合間を縫ってやるだけじゃどうしても時間が足りねぇ。 俺も嫌だが、今回ばっかしは流石にしょうがねぇだろう。 ーー放課後、これから残るぞ」 「わかりました」 (まぁ、しょうがない…よねぇ………) 勉強会にも、もう参加はできなさそうだな。 明日、みんなに謝りに行こう…… トホホと思いながら、会長とこれからの計画を練り直した。

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