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sideレイヤ: 決算書の作成

ーー嗚呼、腹が立つ。 (この忙しい時に、よくこんな事してくれたなぁ) 風紀から共有があった時は、一瞬理解ができなかった。 こんな、経営者の息子たちがこぞって通う学校でまさかの虚偽報告の疑惑。 (う、そ…だろ……) この学園で嘘の報告書をなんざ提出する奴らはいねぇだらうと高を括っていた、俺が馬鹿だったのか……? ただでさえ、こっちは2人で合間縫って作ってんのに。 その書類も、全部いちからになんのか……? 「……っ、堪ったもんじゃねぇな」 火のないところに煙はたたない。 こういう疑惑や不安要素は、早めに潰しに行った方がいい。 俺はイライラをそのままに、その日の放課後小鳥遊の教室へ向かった。 そうして調べ上げた結果は、黒。 それも、酷いくらいに真っ黒だった。 (っ、クソが……っ!) 一体やった奴らは何考えてんだ。 お前らそれでもこの学園の生徒か? 親が知ったら泣くぞ。いや、最早そいつらの会社がそれくらいのレベルだって事か…… (やってた奴ら、俺が社会に出たら全員ブラックリストに突っ込んでやろうか……) 俺は、自分の立てた計画を乱されるが嫌いだ。 体育大会の当日に起きた駐車場とかの不可抗力のイレギュラーだったら…まぁ100歩譲って許す。 だが、今回のような明らかに人の欲や心情で起こるイレギュラーに関しては断じて許す事が出来ない。 (多分〝龍ヶ崎〟や〝小鳥遊〟を舐めてやったわけじゃねぇだろうな) 恐らく、前々から繰り返されていた筈だ。 だからこんなに違反している部活動が多い。 (チッ、前の生徒会の奴らは何してたんだよ) 前々から積み重なった悪事のしわ寄せが、一気に俺たちに来ているようなこの現状。 「っ、この……っ」 思い出して、またイライラしてくる。 『大丈夫ですよ』 あいつに言われた言葉が、頭に響いた。 中学から生徒会長を任されていたが、全てをそつなく完璧にこなして来た。 こんな失敗を起こしたのは今回が初めてで、俺自身…あの時はかなり焦っていて。 『〝俺とお前なら仕事早えぇから、これくらいのこと直ぐに終わるだろう〟でしょ?』 『会長らしくないですよっ』 (俺らしくない、か……) お前、いつからそんな俺の事知ってんだ? 部活動は、やっぱあいつと周って正解だったな。 俺1人で周っていたら、多分何人か殴りかかってた。 それくらいに今回の件は相当頭に来ている。 「はぁぁぁ………」 放課後の生徒会室で、1人ポスッと椅子にもたれかかる。 今日は、俺の方が先にここへ着いたらしい。 あれから、決算締め切り日までの計画を改めて練り直して、下校時刻ギリギリまで業務をしている。 俺が言うのも何だが、小鳥遊はかなり仕事ができる奴だ。 俺が指示を出す前に俺の意思が分かるかのように自ら動いてくれる。 (やりやすいんだよなぁ……) 業務をする奴の事を考えて毎度毎度の指示を出さなくてもいいから、思いっきり自分の仕事に集中できた。 計画を改めて練り直した時は本気で焦っていたが、こいつと業務をしていると焦らなくても確実に終わるだろうという余裕が心の中に生まれてくる。 (……不思議だ) 何で、あいつの隣はこんなにも居心地が良いんだろうか。 部活動周りの時も、あいつがいたから俺はあの場では怒りを何とか鎮める事ができた。 ポソッ 「お前は、一体何なんだ……小鳥遊」 分からない。 でも、取り敢えず今は目の前の事に集中しなければ。 ピッ ガチャ 「お疲れ様です、会長」 「おう」 「今日も頑張りましょうねっ!」 このクソ忙しい中。 それでもこいつはニコリと微笑んでくる。 「………ククッ、そうだな。 やるぞ小鳥遊」 「はぃっ」 それからは、またいつものように必要最低限の業務の会話をしながら互いに目の前にある書類を片付けていった。 〝神は、乗り越えられない試練は与えない〟と言うが、神を信じてねぇ俺にはどうでもいい言葉だ。 まぁ……願わくば、もう何も起きなけりゃぁ良いんだがな。 〝起きた事には、必ず理由がある〟と言った奴もいたな。 (じゃあ、今回の件が起こったは、一体何だよ……) 期末テストが近づくこの時期に、会計たち3年は抜きにして小鳥遊と2人で仕事をして。 俺たちが通常通りに業務をすれば、あいつの体育の時間帯や他のその他合間合間を縫って締め切り日に間に合った筈だった……なのに、今回の件によって合間を縫うだけでは間に合わず放課後の下校時刻ギリギリまで残って業務をする事になって。 ーーこれに、何かが……後から生まれるのか? それとも、まだ何かイレギュラーな事がこれから起こるのだろうか。 (いや、流石に辞めてくれ) もう、これ以上はごめんだ。 ………そう思っていたのに、 ーー事件は、また俺の全く予想してなかった事で起こる。

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