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sideアキ: piano 1

(静かだ………) 3日前、みんながそれぞれ家に帰って行った。 イロハとカズマは仲良く一緒に。 タイラも元気よく挨拶して。 月森先輩は「お盆は一族の中で最も大事な時期ですので、申し訳ありませんが…」と申し訳なさそうに。 佐古は久しぶりに外の友だち達とゆっくり過ごしに行くらしく「じゃぁな」と律儀に声をかけてくれて。 それを「ゆっくりしておいでね~」と見送った。 宿題会のお陰で、みんな夏休みの半分で見事に宿題が終わった。 まぁ、早く終わるのは別にいい事…なんだけど…… みんなが帰ってから3日目、とにかくやる事がない。 (流石に、限界) まったくもってつまらない。 何だこれは、俺1人じゃんか。 「外、行くか」 森の中とかグラウンド周辺は噴水探しでイロハ達と散々周り尽くしたし、今回は校内でも探検しようかな。 (どうせ誰もいないし、先輩たちの階とか行った事ない場所とか行ってみっか) それで、ハルにまた校内見取り図作ってやろうかな。 「おしっ!」 広い、広い校舎内。 長い長い廊下がいくつもあって、延々と歩く。 (ほーんっと、広すぎだろこの学園……) 外といい校舎の中といい、学校じゃないみたいに広い。 下手すりゃどっかの金持ちの別荘とかホテルとか並み。 「今どこらへん歩いてるか、ちゃんと確認しとかないと……」 これは、マジで迷うやつだ。 「ーーん?」 今、何か音がしたような…… 耳に手を当てて集中すると、微かに何かの音が聞こえる。 (…? なんだろう) 聞こえてくる音を頼りに、その方向へ歩いて行った。 だんだんとはっきり聞こえてくる音は、ピアノだった。 着いた先は、第3音楽室。 (第3って……音楽室そんな要るのか?) 謎すぎるだろ、一体いくつあるんだ本当。 「上手い、な………」 流れるように綺麗な旋律。 適度な強弱とミスタッチの無い弾き方。 感情も、しっかりと込められているように思う。 (誰が、弾いてるんだろ……) ちょっとだけ、薄くドアを開けてみる。 「ーーっ」 (ぇ、) 新品とは言えない、ちょっと年季の入った古いピアノ。 その椅子にはレイヤが座っていた。 (う、そ……) これ、レイヤの音だったのか。 なんか意外だ……こんな感情豊かに弾くんだな。 音楽室の窓から入る柔らかな光と、年季の入った古いピアノを真剣な顔をして弾くレイヤは ここが学校って事を忘れるくらいに、綺麗で。 (まるで、何かの絵みたい) 何か本当にこんな絵ある気がする。 それくらい、ぼぉっと見入ってしまって……… ーーカタンッ 「っ、」 (ぁ、やばっ) 「ーーん」 第3音楽室自体が古いのか、持ってた扉が音を立ててしまった。 「誰だ。扉を開けろ」 ピタリと、演奏が止まる。 (あぁー俺の馬鹿……) 何やってんだよもー…… どうしよう…でももうバレてるし、隠れようがないし…… (うぅぅ……くそっ………) 一度「はぁぁぁ…」と大きく息を吐いて、カラカラッとゆっくり扉を開けた。 「ーーハルだったのか」 「す、すいません……」 「? 何を謝ってるんだ?」 「だって、演奏止めちゃったので………」 せっかく、綺麗な曲だったのに…… 「……ククッ、別にいい。何だ、この曲好きなのか?」 「いや、好きっていうか…聞いたことがあったので……」 「あぁ。まぁ有名な曲だしな」 演奏を止めてしまったのに楽しそうにクククッと笑われるのが意外で、思わずポーッと見てしまう。 「おい、いつまでそんなとこ突っ立ってんだ?」 「っ、へ?」 「ほら、こっち来いよ」 おいでおいでと手招きされて。 俺は、吸い込まれるように第3音楽室の中に入っていった。

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