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「それでは、我々はこれで」
「ハル様っ、佐古くん、また来週です!」
「うんっ、またね~」
今日は金曜日。
先輩とタイラと別れて、佐古くんと2人で部屋へと続く廊下を歩く。
「ふふふ、佐古くんの外のお友達かぁ……どんな人たち?」
「………ただただうぜぇな……」
「へぇ、楽しそうだねぇ!」
「一回来てみてぇっつってたんだよ。いい機会だしな」
「いいねいいね。佐古くんの衣装見てもらおうねっ」
「ぁ、そうだった…忘れてた……チッ、だりぃ……」
「えぇっ、凄く似合ってたよ本当に!きっとみんなも褒めてくれるって」
「はぁ? 別に俺は…褒めて欲しいわけじゃねぇし……」
「うーん照れ隠しかなぁー佐古くぅーん」
「っ、てめ」
「あはははっ」
笑いながら、ポッケから出したカードキーをドアのセンサーに当てた。
ピッ
ガチャ
ーーーーパサッ
「………ん?」
「っ、ぇ…………」
「何だ、これは?」
ドアに挟まっていたよく知る手紙を、佐古の手が拾った。
それを思いっきりバッ!と取り上げる。
「っ、は?」
「ぁ………」
(しまっ)
つい、条件反射で取ってしまった。
時々、部屋のドアに手紙が挟まれていることはあった。
でもそれは俺が1人でドアを開ける時に限ってだけで。
(やば、い……)
多分、今日佐古が外へ出かけたのは犯人にとってイレギュラーな事だったんだろう。
ハルがお茶会から帰ってきて、1人でドアを開けるのを予想して挟んだ筈だ。
(っ、変質者め…あんだけ計算高かったのに、ここでミスんのかよ……)
「……おい、ハル」
「な、なに……?」
「その手紙は、 ーー何だ?」
俺が勢いよく取り上げたお陰で、佐古の目がギラリと光っていた。
「たっ、ただのラブレター? だと思うけどなぁっ。ファンレターって言うのかも…あはは……」
「ほぉ。ただのって言う割に、随分取り上げんの速えぇじゃねぇか」
「ぇ、そうかなっ。僕宛だから僕のだと思って……っ」
「俺はまだその宛名も見てねぇぞ? 何でお前のって分かってんだよ。封筒に見覚えでもあんのか?」
「っ、」
(くそ………っ)
佐古は、やっぱり頭がいい。
腹が立つくらい的を得た指摘が返ってくる。
「それに、拾ったとき思ったが……その手紙、何かやけに分厚くねぇか?」
「そ、そうだねっ。一体何枚書いてるんだろうねぇ……」
「そうだなぁ…分厚さ的に、ざっと10~20枚くらいか?やけに熱のこもったラブレターだよなぁ、ーーハル」
ガッと少し強めに腕を取られて、玄関へと押し込まれた。
そのままバタンッと乱暴にドアが閉まり、昨日の先輩みたいに壁ドンのような感じで俺が逃げないよう押し付けられ、前からじっくりと覗き込まれる。
「………おい、ハル」
「っ、な、なに」
「その手紙、寄越しやがれ」
「だ、だめ……っ」
「あぁ? 何でだよ、見られちゃまずいもんでも入ってんのか?」
「ちがっ、そんなんじゃ……」
「じゃぁ見せろ」
「…………っ」
いつまで経っても譲らない俺に、佐古が痺れを切らしたように力ずくで手紙を掴んできた。
「ぁ、佐古くっ」
「手を離しやがれ、ハル」
「っ!」
どれだけ俺が頑張ったって所詮佐古に勝てるはずもなく、バッ!とそのまま取り上げられてしまった。
その拍子に、緩く綴じられていた手紙の封が外れてーー
バサバサバサッ!
「…………っ、は……?」
(……嗚呼、やっちゃった………)
大きな音を立てて中からこぼれ落ちたのは、いつも通り大量の写真。
目の前の顔が驚いた表情でその散らばったものを凝視していた。
それを、頭が真っ白になって泣き出しそうになりながら…見つめる。
「…………おい、ハル」
「っ、は、はぃ……」
「お前、他にもまだこれと同じような手紙、持ってんだろ……?」
「…………っ」
「リビングのテーブルに、全部出せ。今すぐにだ」
静かに、でも凄く苛立っているような声に、やっと壁に押し付けられていた手を離された。
「今からこの部屋に何人か呼び出す。勿論お前に拒否権はねぇ。
ーーわかったら、早く言われた通り準備しろ」
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