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sideアキ: 全部、話す 1
「…………ほぉ……」
「これは これは………」
「何だこの胸糞悪ぃ物は」
「……えぇ、本当に胸糞悪いですね」
「…………チッ」
上から順に、レイヤ・月森先輩・梅谷先生・櫻さん・佐古。
佐古が呼んできた人たちは、意外にもこの4人だった。
レイヤは2日間で家の会議を全て片付け、丁度さっき学園に帰ってきたばかりらしい。
今、俺たちは部屋にあるコの字のソファーに座っている。
俺はレイヤと真ん中の場所に座って、佐古と月森先輩・梅谷先生と櫻さんに挟まれている感じで。
それぞれが、俺が並べた50近くある手紙とテーブルの上に並べきらずに重なっている1000枚を軽く超える写真を眺めている。
その表情は…まさに氷点下マイナスレベルで……
無意識に、カタカタ震える手を膝の上でギュッと握った。
「…………さぁて、ハル」
ビクッ
「っ、は、はぃ…レイヤ……」
「話してもらおうか、全部」
「ぁ、あのーー」
「ごめんなさいは後だ。 取り敢えず話せ」
こういう時はして欲しくないのにまた言いたかったことを先回りされて、もう逃げ道がなくなる。
チラ…と周りを見ると、皆んなが怖い顔で俺の事を見ていて。
「ーーーーっ」
ヒグッと思わず喉が鳴った。
(落ち着け…落ち着け俺……)
みんながこんな表情をしているのは、全部全部俺のせいだ。
俺が早い段階で、みんなに言ってなかったから……
みんな口々に「なんかあったらすぐ言えよ。いつでも頼ってね」って声をかけてくれてたのに……
(今、みんなにこんな表情をさせてしまっているのは、 ーー俺の所為)
ここでまた嘘を重ねたら、もう俺はみんなからの信頼を無くす筈だ。
それくらいの事を、した………
「…………っ」
(ど、しよ……)
泣く資格なんて無いのに、ジンワリ涙が浮かんでくる。
それを見られたくなくてバッ!と思わず下を向いて
ギュッと目を強く閉じて
大きく大きく、深呼吸して
それから、ゆっくりと…顔を上げてーー
「……全部、お話っ、します…………っ」
(もう、逃げられないし…逃げない……!)
ひとりひとりの顔をじっくり見ながら、これまであった事を思い出してポツリポツリと話し始めた。
「ーー以上、ですっ」
全てを話し終えて、そっと皆んなの出方を伺う。
カタカタ震える体を止めるのは…もう諦めた。
バクバク鳴る心臓と、徐々に浅くなっていく呼吸と……
全部が全部怖くて緊張してしまって、でも怒られる事はしょうがなくて…ただただ下を向く。
「……本当に、それで全部か?」
「はぃっ、全部です……!」
「本当に…?もう、何も隠してないか……?」
「隠して、ません………っ」
(本当に、もう何もないっ)
じんわりとまた涙が張ってきて
目の前が、歪んでくる。
「………っ、今まで、だまってて…ご、めんな、さっ」
ポンッ
「ーーーーそうか。なら、いい」
「っ、え………?」
大きなよく知る体温が、頭に触れてくれる。
びっくりして隣を見ると、レイヤが優しく微笑んでいた。
「ったくお前は…こんな事1人で抱え込みやがって……
今までずっと怖かったな、ハル。
ーーもう、大丈夫だから」
「レ、ヤ……っ」
「ほら、おいでハル」
「っ! ~~~~っ!!」
大きく、両手を広げてくれて
その中にガバッ!と一気に飛び込んだ。
ぎゅぅぅっと受け止めてくれる大好きな体温に、今までの恐怖とか緊張とかが、全部全部…溶けていって……
「……っ、ぅえっ、ひっ、うぇぇ…っ、うわぁぁっ!」
どんどん どんどん、涙が溢れてしまった。
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