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sideアキ: 慌ただしい文化祭準備
「小鳥遊くん!ちょっとこっち手伝って!!」
「はいっ!」
本来は授業中の時間だが、今週末に控えた文化祭の為全ての時間が文化祭の準備時間となり、学園の至る所でわいわいと慌ただしく準備が行われている。
「……こんな感じで大丈夫?」
「完璧、有難う!」
「いいえ~」
「ハルそろそろ時間だよ! 月森先輩が迎えに来てる!」
「わ、本当だっ。じゃぁちょっと行ってくるねみんな!」
「行ってらっしゃい小鳥遊くん」「頑張ってね~」というみんなの声を背中に貰いながらA組のクラスを出て、廊下で待ってる月森先輩のところに急いだ。
「先輩すいませんっ、お待たせしました」
「いいえ、構いませんよハル様。それではまいりましょうか」
「はぃっ」
結局、あの2日間の調査では正確な犯人は分からなかった。
でも1000枚を超える写真を元に絞りに絞り込んだ結果、〝犯人は自分と同じ1年生の生徒である〟という事が判明した。
受け取った手紙の中に、同じ日に2つの場所から撮られている写真が入っているものがあった。
写真を撮っている2つの場所と、校舎の各階や職員室・各職員たちがいる場所までの距離を計算してみた結果、どう考えても写真を撮っていたであろう時間内に2箇所を移動できるは校舎の1番下にクラスがある1年生だけだ、という結果に至った。
犯人が複数人いる場合も考えられるが、撮り方の癖から明らかに全てを1人で撮っているのが分かる為、その線は除外された。
(まさか、同じ1年の中に変質者がいるとはな……)
クラスは、まだ絞りきれてない。
でも、A組じゃないのは確実だ。
ハルのクラスに関しては梅谷先生が調べ上げてくれて、その結果写真を撮られていた時間帯に変な動きをしている生徒は1人もいない事が分かった。
(まぁ、絶対A組では無いとは思ってたけど……)
だってみんないい人たちなんだもん。
もしあのクラスの中に犯人がいたら、俺確実に人間不信になりそう……
(ってことで、残りはB~F組までの5クラス…か……)
時間があったら5クラス洗い出す事は可能らしいのだが、週末に差し迫っている文化祭を目前にしてみんなのタスクが大量にあり、調査の進行が遅れていた。
(まぁ、俺としてはもう大丈夫だけどな……)
みんなにバレた金曜日を境に、あんなに貰わない日なんて無かった手紙がピタリと止んだ。
視線も、今は全く感じない。
この前、最後の実行委員会会議があった。
俺はこの会議終了後に2回連続で視線を感じてて、それを言ったらレイヤが同席してくれた。
でも、結局実行委員会のなかにも怪しい奴はいなかったみたいで……
(本当、変に計算高い野郎だな……)
雲隠れするのが本当に上手だ。
「ハル様、着きましたよ」
「有難うございますっ、先輩」
これからのハルの学校での過ごし方に関して、ある決まりが出来た。
・決して1人で行動をしない事
・お昼は生徒会室で食べる事
・何かあったら直ぐに周りにいる人へ言う事
この三ヶ条は絶対に守れと、みんなに言われた。
今は生徒会役員として各場所の進み具合をチェックしていく仕事の最中で、役員はそれぞれに散らばってる見回っているからハルには月森先輩が付いて一緒に回ってくれている。
「……うん、この場所も問題なく作業が終わりそうだな」
「あ!小鳥遊様丁度良いところに!ちょっとこの書類に生徒会の判子貰い忘れちゃってて……今貰って良いですか?」
「わ、良いですよ。良かったですね気づいて」
書類を見ながら素早くチェックして、捺印する。
「はい、どうぞ。特に問題なかったです」
「うわぁ良かったー……有難うございます!」
「いえいえ、引き続き準備頑張ってくださいね」
「はい!」
こうして、ひとつひとつ自分に振り分けられた所の進捗を確認して、書類に丸を付けて行って……
「よしっ。先輩、終わりました」
「お疲れ様ですハル様」
「有難うございます、付き添っていただいて……」
「ふふ、当然の事をしたまでですよ。お気になさらず」
「ハールー!!」
「ん?」
向こうから、イロハ・カズマ・佐古が近づいて来た。
「終わった頃かなぁって来てみた!どう? もう教室帰る?」
「うんっ、ナイスタイミングだよイロハ。後はこの書類を生徒会室のレイヤの机に置いたら終わり」
「わぁ!タイミング良かったんだ!ほらねーカズマ佐古くん、おれの言った通りだったでしょー!!」
「そうだな」
「…あーうぜぇ」
「なっ、ちょっと佐古くんー!?」
「クスクスクスッ。それでは、ここでお三方にバトンタッチ致しましょうか」
「「分かりました!」」 「…あぁ、分かった」
「ハル様の事、よろしくお願いしますね。それでは私は教室へ帰ります。ハル様、お気をつけて」
「ぁっ、有難うございました」
先輩を見送って、4人で生徒会室に寄ってから教室へ続く道のりを歩く。
「ハルー、今はなんにも感じない?」
「うん、なんにもだなぁ……」
「身を隠してるんだろうな、きっと」
「ったく…しぶてぇ野郎だ」
「本当だよ!ハル、引き続き警戒だからね!!」
「クスクスッ、はぁい了解ですっ」
「もーハル緊張感なさすぎだよーまた会長たちに怒られちゃうよ?」
「ぇ、そ、それはやだ!」
「あははハル必死っ、じゃぁ頑張って早く教室帰ろっ!」
「はーぃ……」
わいわい話しながら、階段をゆっくりと降りていく。
と、
パタパタパタ……ガクッ!
「ぁ!」
「っ、危なっ!」
「ハルッ!?」
この忙しい期間だからなのか、前から猛烈なスピードで階段を駆け上がっていく小柄な生徒が俺の目の前で階段を踏み外した。
咄嗟に腕が出て、その子を支える。
そしてその子を支えた所為でよろけた俺の体を、佐古がガシッと支えてくれた。
「っ、と……佐古くん、ありがと」
「はぁぁぁ…お前まじで気をつけろ、ハル……」
「あはは…ごめんなさい本当に……」
乾いた笑い声を出しながら、腕の中にすっぽり入っている小柄な生徒を見る。
「大丈夫? 足挫いたりしてないかな……?」
「っ、ぁ、そのっ!大丈夫…ですっ!」
「本当に? 念のため保健室行ったら?
……って、あ、ちょっと!」
俯いているその子の顔をイロハが覗き込んだ途端、バッ!と勢いよく俺たちから離れてその子はまた全力疾走で階段を駆け登って行った。
「行っちゃったね……」
「何か、嵐のような奴だったな」
「まぁ…あんだけ走れんならどこも怪我してねぇだろ」
「う、うんきっとそうだね!わぁーそれにしてもびっくりしたぁ……!ハルナイスキャッチだったよ!!」
「ふふっ、ありがと」
そのまま、何事もなく教室へ帰ってクラスの準備を手伝った。
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