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sideレイヤ: まどろみの中で

ふと、意識が浮上する。 「ん………」 (今、何時だ…あぁ、まだ朝の6時前か……) まどろみながらも、腕の中の存在を確認してほぉっと安心した。 正直、泣くとは思わなかった。 泣いたのなんていつぶりなのかすらも覚えてないのに、こいつからのたったひと言でそれは簡単に零れ落ちた。 (想いが通じるって、こんなにも凄いことだったんだな……) これまで俺に告白してきた奴らに申し訳なさを覚えるくらいに、凄いことなのだと身をもって実感した。 ずっと……もうずっと、こいつからの言葉を待っていた。 たった2文字の〝好き〟という言葉を あの雷の日から、ずっとずっと…待ち焦がれていてーー ポソッ 「っ、やべぇ、また涙が出てきやがる」 (俺の涙腺死んだんじゃね?) 力強く目を閉じて、なんとか堪えた。 に、しても……… (あぁくそ、挿れてぇなぁ……) まだ本調子ではないのは、更に痩せた体を見れば一発で分かる。 だから、こいつの体力が戻ってからだなと思って元々最後まではするつもりがなかった。 こいつも「最後まではしないでほしい」と言いかけてたから、まぁ嫌がることは極力したくないし今回の決断は当たりだったと思う。 思うの、だが…… (予想以上に、エロかった………) いや、俺絶対ぇよく耐えた方だぞ。 俺以外のやつだったら、ハルのこと考えずに食ってたんじゃないだろうか? 「はぁぁ……お前、まじで俺に感謝しろよ」 そんくらいに、エロかった。 前回のあれは媚薬を使われてたからあんなにエロいのだと思ったが、媚薬なんて関係無いくらいにこいつ自身の才能なのだということが分かった。 初めての快感を素直に受け入れて、目に涙を浮かべながらそれでも一心に俺を見つめてくるこいつは、本当に。 (可愛かった、な……) 勢いで俺のモノを咥えたにもかかわらず、どうすればいいかわからずにピタッと止まったのさえにも、ただただ愛らしいと思えた。 いやぁ、愛の力ってすげぇわ。 多分、俺こいつになら何言われても受け入れる自信がある。 目に入れても痛くないってこういう時に言うんだっけ? (あーやば、頭おかしくなってきた) 「ん………」 腕の中の存在が小さく身動いで、俺の方へもっと体を寄せてきた。 それに応じるように、ふんわりと抱きしめてやる。 ふにゃりとタイミングよく笑った顔に、小さくキスを落とした。 (嗚呼、足りねぇなぁ) もっと、もっとーー こいつは俺のものなんだと、知らしめたい。 (でもなぁ……) 〝キスマークは付けないで〟と、最中に言われた。 「家で医者に見てもらう時、気まずいから嫌だ」と。 まぁ、言い分は分かる。 分かるの、だが……… (何か腹立つな……) 俺はハルと想いが通じあって、本当の意味で婚約者になれた…なのに。 (お前は俺のもんなのに、俺のだって証はネックレスだけかよ) しかもネックレスなんざ、取ってしまえば終わりだ。 ーーーー嗚呼、嫌だな。 それは、純粋な執着心。 こちらを向いて寝ているハルの、上になっている方…右耳の付け根辺りの髪を退ける。 そして、そこにキツめに吸い付いた。 ピクッと寝ている体が反応するが、今は無視する。 (………っと…こんなもんかな……) 暗がりの中どうにか確認して、ちゃんと付いていることに満足する。 そのままパサリと髪を戻した。 「ここなら、誰にも見つからねぇだろ」 そう、誰にも……勿論ハル自身にだって見つけられないと思う。 耳が邪魔で鏡には絶対に映らない場所だし、完璧だ。 (ははっ、俺子どもみてぇ) 自分だけが知ってる、秘密。 自分だけしか知らない、小さな小さな執着心の跡。 (……ん、満足かな) もう一回寝ようと、再びベッドの中に潜り込んだ。 『ずっと…いっしょに、いてくれる……?』 (あぁ、ずっとずっと……死ぬまで一緒だ、ハル) やっと手に入れたんだ。 始めて心から欲しいと思ったその存在を、ようやく手に入れた。 もう離すことなど、決してない。 一生……生涯をかけて大切にしてみせる。 だからーー ポソッ 「お前も、もう俺から離れんじゃねぇぞ」 サラサラの髪に顔を埋めて、暖かな体を抱きしめながら もう一度、まどろみの中に身を委ねたーー

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