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sideタイラ: 親衛隊からのサプライズ
「ハル様っ、まいりましょう!」
「うん、行こっかタイラ」
今日は2週間に一度のお茶会の日。
「♪~♪~」
「? タイラ何か楽しそうだね、どうしたの?」
「えへへ~秘密ですっ」
「えぇー教えてよー」
「だーめーでーす!」
クスクス笑って廊下を歩く。
ハル様が正式に龍ヶ崎レイヤと婚約者同士になられたことは、あっという間に学校中に知れ渡った。
みんな食堂でのあの一件を知ってるから「ようやくか!」って生徒全体で騒いでて。
文化祭明けの登校日、ハル様のクラスはハル様が教室に入られた瞬間クラッカーを鳴らしたらしく、「サプライズ成功!」と喜んだらしい。
勿論、親衛隊だって黙っちゃいられない。
だって、自分の大切な人が長い道のりを経てやっと幸せを掴んだんだから。
会長の親衛隊は、大きな花束をささやかにプレゼントしたそうだ。
元々あまり活発ではない隊な分、会長に嫌がられない程度に…そっと。
受け取った会長は、それはそれは嬉しそうに笑ってくれたらしい。
(さて、僕たちは……)
我らの大切な小鳥遊様の、幸せなビックニュース。
(ふふふっ、喜んでくださるといいなぁ…!)
きっと大丈夫。
だって、みんなで一生懸命準備したから。
「ーーさて、ハル様。扉開けますよ」
「うん、有難うっ」
いつも通り食堂に着いて、扉を開けた。
「…………っ、わぁ……!」
目の前いっぱいに広がる、〝おめでとうございます!〟の文字。
手作りの飾り付けが施された食堂は、とても華やかなものになっている。
テーブルいっぱいに並べた沢山の料理の数々は、みんなのアンケートで選んだものばかり。
ハル様には、いつも通りの人数で構成されたお茶会だとお伝えしていた。
だから「小鳥遊様!」と呼んでいる親衛隊員全員の数にも、きっと驚いているはず。
「ふふふっ、ハル様びっくりしました?」
「ぅ、ん……これ、一体いつからこんな準備を…」
「秘密です!さぁ、みんなが呼んでますよ、まいりましょう!」
「わっ、ぇ、ちょ、タイラっ」
固まって動いてくれないハル様の背中を押して、みんなの輪の中に案内した。
「小鳥遊様はこちらに座られてくださいっ!」
「欲しいものあったら取るんで、今日は動いちゃ駄目です」
「本当におめでとうございます、小鳥遊様」
「み、んな……っ、ありがと、凄い嬉しい」
「えへへ」と本当に嬉しそうに笑うハル様に、早速何人かがダメージを受けている。
「飾り付け凄い綺麗!みんなで作ったの?」
「はぃ!手分けして作りました」
「わぁそうなんだ…有難うっ」
「い、いいえそんな、お礼を言われる程でも……っ」
「小鳥遊様何か食べられます? 取りますよ」
「食べます!えぇっと…うわぁどれも凄く美味しそう!いい匂い…みんなも取ろう~!」
「「「はい!」」」
そんな感じでわいわい始まった、おめでとうの軽いパーティー。
初めはみんな「おめでとうございます!」ってわいわい話してたけど
だんだん、その方向は変わってきて……
「小鳥遊様、じ、実は僕も好きな人がいるんですっ」
「わぁそうなんだ!告白するの?」
「それが悩んでて…でも僕も小鳥遊様みたいに幸せになりたいし、頑張ろうと思って……」
「ぁ、それ僕も!」
「俺もなんですよ小鳥遊様。
何か小鳥遊様みてたら、ちゃんと想いは口にしなきゃ駄目だなぁって思って」
「わかる!僕も頑張りますね!!」
「ぇ、ぁ、うんっ?」
「小鳥遊様は、どうやって会長様と仲を深められたんですか?」
「ぇ、」
「あと体育大会の話も!なんか俺小鳥遊様が嬉しそうにメダル下げて廊下歩いてるの見たんですよね。もしかしてあれって、会長様があげたんですか?」
「えぇ!?ぇっ、と…」
「あ!後夏休みのお話もしてくださいっ!会長様、小鳥遊様に合わせて今年は帰られなかったんですよね? お休み中は何されてたんですかっ?」
「あぁーっとぉ……」
「クスクスクスッ、ハル様困ってらっしゃいますね」
「助けられないんですかっ、先輩?」
「今日は辞めておきます」
みんなの輪の中心にいるハル様は、困ってるけどでも楽しそう。
普段は制限してしまってる分、今日は隊員のみんなにも心から楽しんで貰いたいし、ハル様にもたくさんみんなと話して欲しいなと思って。
月森先輩と少し離れたところで、その光景を微笑ましく見守っていていたーー
そして、そのまま行事の何もない日常はあっという間に過ぎ去って。
ハル様が健診の為屋敷に帰られる日が、また近付いてきた。
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