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【side レイヤ】
ピッ
ガチャッ
「お疲れ様です、レイヤ」
「あぁ、お疲れ、ハル」
昨日、いきなりこいつが屋敷へ戻っていった。
家に呼ばれたらしいが、今日の朝早く帰ってきたそうだ。
教室の窓から遠巻きにいつものメンツで登校してくるのが見えたが、特にこれといって変わった様子はなく、楽しそうで安心した。
(まぁ、今日あいつのクラス体育あるしな)
その時にでも聞けばいいかと思って、その時間帯に生徒会室へ向かって、今。
相変わらずクソ真面目にチャイムの鳴る5分前にドアを開けたハルは、いつも通り何ら変わりない様子で入ってきた。
(心配しただけ無駄だったか……)
小鳥遊のいきなりの呼び出しは初めてだったから、何か大変な事でもあったかと思ったが…どうやらただの思い違いだったみてぇだな。
「こいつに何も起こってなくて良かった」と、
ホッと息を吐く。
………だが、
「ーーーー待て」
「? レイヤ、どうしたんですか?」
近づいてきたハルに、無意識に言葉を放っていた。
(待て……何かが………)
ーー何かが、〝違う〟。
(「違う」だと? 馬鹿な、目の前にいるのはハルだ)
いつも通り笑っているこいつは、どこからどう見ても正真正銘のハル。
それなのに…頭の中は煩いくらいに警鐘が鳴っていて。
(何だ、この感覚は)
分からない、だが………
ーー俺の本能が、〝違う〟と言っている。
ポツリ
「お前は………〝誰〟だ?」
「え?」
小さく呟いたその疑問は、口にすれば確信へと変わった。
「おい、てめぇは誰だ」
(こいつは、〝ハル〟じゃない)
見た目は、確かにハルだ。
だが、違う。
〝こいつの内側〟が、ーー 違う。
「本物のハルを何処にやった。屋敷か?」
きょとんとした顔でこちらを見ていた奴の表情が、ふふふと微笑んだ。
「……ねぇ、僕の何を見てそう言ってるの?」
「お前の〝心〟だ」
「〝心〟…か…… 心は、〝目には見えない〟よ?」
「そうだな。だが、〝見える〟と、教えてくれた」
(あいつが、痛いくらいぶつかってきて、教えてくれた)
だから、分かる。
ーーーーこいつは、ハルじゃない。
じっと、互いが出方を見ているようにシィ……ンとした緊張が漂う。
やがて、先に動いたのはあいつだった。
「ーーっ、ふふふ。うん、〝合格〟かな」
「は?」
(合格? 何が)
「ね、レイヤ。ここは確認しなくていいの?」
あいつが指を刺したのは、自分の右耳の付け根。
「ハッ、んなことしなくても分かる」
確認しなくても、そこに〝跡が無い〟ことぐらい、分かる。
「うん、そっか…そっかぁ…… ーーうん」
強めに言うと、
そいつはポツリ ポツリと、心から「嬉しい」というように呟いた。
そして、
「ねぇ。今からここに、僕と…
ーー〝ハル〟と関係の深い人たちを呼んでくれない?」
「は? 今授業中だぞ? 何言ってんだ」
「授業なんか関係ないよ。
僕は、1分でも1秒でも惜しいんだ」
ハルによく似た、一方も譲らない瞳。
真っ直ぐに睨まれて、軽く息を吐く。
「………すぐに呼ぶから、待ってろ」
「こいつは誰なんだ?」とか「本物のハルは一体何処にいる?」という疑問は置いておいて
取り敢えず指示通りにする為、
ポケットのスマホを素早く出したーー
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