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その5: 雷の話

--------------------------------------------------------- ◯リクエスト 雷が鳴ってレイヤが部屋を訪ねてくるシチュエーションで --------------------------------------------------------- ※文化祭編の後夜祭後(ハルとレイヤの想いが通じ合った後らへん)の時間線です。 【side 佐古】 カッ! ドォォンッ!! 「うぉぉ…すげえ音だな」 (今のはぜってー近くに落ちたわ) 真夜中の寮の部屋。 雷の音がやばすぎて目覚めてしまった。 確かに下校中パラパラ雨は降ってたが、まさかそれがこうなるとは…… 自室のドアを開けてリビングに向かう。 暗がりの中、カーテンの向こうは嵐のように雨と雷が鳴り打ち付けていてとにかくうるさい。 冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを取り、口を付けながら相部屋のドアを見つめた。 あいつは起きてこねぇのか? こんだけうるせぇのによく目が覚めねぇな、おい。 ま、逆にいいことかもしれねぇな。 あーあ、俺も疲れたしもうひと眠りすっかな。 クワァ…と欠伸をしながら、自室のドアを開けようと手をかける。 ーーと、 コンコンッ 「は?」 扉を外からノックされるような音が聞こえた。 (今、真夜中…だよな) 寮の消灯時間はとっくの昔に過ぎてる。 窓の外がうっせぇし、それと聞き間違えたか……? コンコンッ! (いや、ちげぇな) 今度は強めに叩かれて、思わず眉を寄せた。 「こんな時間に誰なんだよ、一体……」 丸雛と矢野元?いや、あいつらはこの嵐の中2人で大人しくしてんだろ。 星野か?怖くなって尋ねてきたとか? いや、確か同室者がいい奴っつってたしな。 そいつがどうにかしてそうだ。 となると、一体誰だ………? (ま、開けてみっか) 今起きてるのが俺で良かった。 もしあいつが開けて不審者だった場合、溜まったもんじゃない。 カチャリと内側の鍵を回して薄く扉を開ける…と、それにガッ!と勢いよく手を入れられ思いっきりドアを開かれた。 「っ………て、は?」 「佐古か」 (会長…だと?) こんな真夜中に、どうして龍ヶ崎レイヤが部屋の前に突っ立っている? 「悪いな、上がるぞ」 「は? って、おい」 呆然とする俺の隣をすり抜けて、あっという間に靴を脱ぎ部屋へ入っていく。 乱暴に鍵を閉め奴の後を追いかけると、ハルの部屋の前に立っていた。 「あいつはこの中か?」 「…あぁ、そうだ。このうるせぇ中起きてねぇぞ」 「そうか、分かった」 「多分寝てるはずだから静かにしとけよ」と言う前に、会長は思いっきり強くドアを開けやがった。 ガチャッ!! 「はっ!? てめっ」 「ハル。ハルいるか?」 部屋に入るこいつの後を追うと、こんもり丸く盛り上がった布団があった。 「ハル」 会長の手が盛り上がった部分を撫でると、びくりとそれが大きく震える。 「なぁ、顔…見せれるか?」 そろりそろりと動き始めるも、大きな雷の音でビクッとまた動きを止めてしまった。 「大丈夫、大丈夫だ。俺は此処にいる」 もぞもぞと会長の手が布団の中に入っていった。 (手を、握ってんのか…?) やがてようやく出てきたその顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていて。 「レ、ヤ……っ」 「あぁ、俺だ。ひとりでよく耐えてたな」 よしよしと、奴が空いてる方の手でその涙を拭った。 (ハル、雷が苦手だったのか…) それも相当。 なんかトラウマでも抱えてそうなレベルで。 それでこいつが尋ねて来たのか。 成る程、納得がいった。 「ん、ちゃんとネックレスの玉握ってたんだな」 胸元をぎゅぅぅっと握っているハルに、会長が柔らかく話しかける。 コクンッ!と大きく頷いた頭を「偉かったな」とそっと撫でてやっていた。 「ほら、もう俺が来たから手を離せ。次は俺のこと掴んどけ」 「っ、レイヤ…」 「ん。ハル、おいで」 ガバッと抱きついて来たハルを優しく包み込んで、「佐古」と名前を呼ばれる。 「今日はこのまま此処に泊まるから、そのつもりでな」 「……好きにしろ」 カタカタと小さく震えるハルを抱え込んだまま布団に入っていく会長を見届けて、静かにそのドアを閉めてやった。 (気づかなかったな) 奴が来てくれて、正直良かったのだろう。 自室に戻りベッドへ潜る。 明日は、いい天気だといいな。 この嵐は、夜のうちにどっかへ行ってくれないだろうか? ってか明日の朝メシどーすんだ。 あいつ来てるし、あいつの分も作んのか? 謎だ………だが。 (多分あいつら起きてこねぇだろうし、作り置きだけして先学校行っとくか) 無いよりましだろ。 文句言うんじゃねぇぞ、会長。 明日の朝は何を作ろうかと考えながら、ゆっくりと目を閉じたーー fin. 「わぁ!佐古くんが朝ご飯用意してくれてる!!」 「俺の分もあんのかよ、すげぇな。しかもバランスいいしおかずの品数も多いし彩りも…」 「炊飯器が2つ!? ぁ、こっちのご飯は柔らかい…お粥用なのかな…これって、もしかして僕の為……?」 「どんだけマメなんだあいつは………」 愛する恋人が同室者に胃袋を掴まれないかと、ただただ心配になってしまうレイヤでした。

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