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sideヒデト: 今こそ、カリを返す時
あぁ、やっと ここまでたどり着けた。
なぁアキ、お前なんて顔してんだよ。
んな顔してるクセして何親父んとこ行こうとしてんだ?
お前が居たいのは、そっちじゃねぇだろ。
ったく……会長もちゃんと掴んだけっての。
まぁ、会長や丸雛たちは既に言いたいことは言い終わってる雰囲気。
ーー後は、俺の番か。
「そうだな」
コツ、と小鳥遊社長へ一歩近づく。
「悪りぃが、俺はあいつら程甘くはねぇぞ」
ニヤリと笑うと、同じく向こうの瞳も笑った。
「俺は、アキにカリがたくさんある」
「カリ?」
「あぁ、カリだ」
カリ1や2の問題ではなく、本当に数え切れないほどに、もうたくさん。
今の俺がいるのは、全部が全部こいつのおかげだ。
「そんなこいつが、今恐らく今後の人生に関わる重要な局面に立ってんだ。助けない筈がねぇ」
〝作ったカリは、必ず返さなきゃいけない〟
それは、外の世界で嫌という程教わった事。
「はっきり言って、俺はアキが幸せに笑えんなら後はどうだっていい」
他の奴らなんざ、悪いが所詮オマケのようなものだ。
ーー俺はただ、アキを救いたいだけ。
その為に、容赦はしねぇ。
「TAKANASHIは、日本でやることをやり終えている会社に見える。業界のシェア率も1位を連続して取り続け、流石にもうこれ以上日本で大きくなる事はできねぇだろう」
そうなれば、次に目を向けるのは一体何処か。
「ーー海外だ」
そう、海外。
小鳥遊のブランドが海外進出するという話は、囁かに噂されていた。
だが、それは所詮噂。現状実は何かしらの問題が解決しておらず前に進むことができていない小鳥遊には、到底無理な話だろう。
「…と思っていたが、実際はどうやらちげぇらしいな」
その噂はあくまでも日本のものだ。
海外へ目を向けると、それはガラリと変わっていた。
「俺が親父から聞いた話だと、どうやら既に海外進出の準備をしてるそうじゃねぇか」
〝近々TAKANASHIが海外へとやってくる〟と、海外では前々から囁かれていた。
日本は良くも悪くも島国で、こういった海外からの視点や情報は日本のみの会社だと入るのに時間がかかる。
「そこを、俺は全力で潰しに行く」
T・Richardsonは世界的に有名な大企業だ。
そんな会社を敵に回したら、海外進出なんてろくに出来ない。
「仮にそれで踏み止まったとしても、日本でも容赦はしねぇ」
勿論日本でも有名だ、うちの言い分が聞けない企業は海外の会社にも目をつけられると思っていいだろう。
だから話を少しすれば、企業は小鳥遊がどれだけ大きかろうと後先を考えてこちら側につく。
「テレビCMなんかもだな」
「今後このTV局の番組には出ない」とハリウッドの大スターが言うのだ。
一企業のCMの契約と超大物有名人の出演NG。
今後のことを考えると、視聴率やTV局の存在価値の為一企業との契約を切り他の企業とCM契約を結ぶのが当たり前だ。
「それにプラスして、あいつらの会社も何かしらやるんだろう?」
それらを、全て足したら……一体どうなる?
「小鳥遊は、終わりだ」
後に控えてる同業の会社などたくさんいる。
小鳥遊は、直ぐに追い抜かれるだろう。
そしてそのまま消えてしまう未来が…想像できる。
「逆に問いかけてやるよ、小鳥遊の社長。
ーーさぁ、あんたは一体どうする……?」
誰も何も言わず、静かに俺の言い分を聞いている中
目の前の、双子によく似た瞳を持つ顔へ真っ直ぐに問いかけた。
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