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sideアキ: おかえりなさい、2人とも

ねぇ、この構図凄くない? やばいな。 安心しているような顔つきですね。 ふふふ、可愛らしいですねぇ。 流石双子だなぁ。 お、お写真お取りしてもいいでしょうか……っ、 ……駄目だろ、やめとけ。 ザワザワ 近くで何かを話してるみたいな声がする。 「ん…ぅん……?」 「ぁ、ハル起こしちゃった……?」 「こんにちは、ハル様」 「わぁ、みんなだ。 アキ、アキみんなだよっ」 「ん…ぅん……?」 揺すられて目を開けると、制服を着たみんながニコニコして俺たちを覗いていて。 「ーーっ、」 思わず、起き上がってるハルの背中に隠れた。 「……クスッ、みんな学校終わったの?」 「ぁ、ぅ、うん!そうだよハルっ。梅ちゃん先生がここまで乗せてくれたんだー!」 「わぁ、そうなんだっ」 布団の中で、同じ大きさの手が微かに震える俺の手をぎゅぅっと握ってくれる。 (っ、ハル……) ……正直、みんなのことが怖い。 ここまで俺は、みんなにたくさんの嘘を吐いて迷惑かけてしまっている。 それなのに、今更どんな顔をして向き合えばいいか…全然、分からなくて…… 「ぁ、あの、アキは大丈夫? 昨日来た時はまだ寝てたから、その……」 「うんっ、もう大丈夫みたい。 さっき先生が来てくれて、もう心配ないだろうって」 「そうか、良かった」 「アキのことも心配してくれて有難うイロハ、カズマ」 「ハル様も、顔色が昨日よりいいですね」 「わぁ、本当ですか?」 「アキくんも起きられたので、ハルくんも安心したのでしょう」 「ま、何がともあれまだ安静にしとけよ」 「はぁーい梅ちゃん先生っ」 「っ、お前なぁ……」 「クスクスクスッ」 みんなから投げられる質問ひとつひとつに、俺を庇うようにしてハルが答えてくれる。 それが申し訳なくて肩口にコツンとおでこを押し付けると、ふわりと頭を撫でてくれた。 その手が「いいよ、大丈夫だよ」と言ってくれてるようで…… 「っ、」 (やっぱり、ハルはお兄ちゃんだよ) 同じ背丈なのに庇ってくれてる背中が大きく見えて、それに安心して泣きそうにってしまう。 (ハル、ありがと…っ) ーー今だけ、甘えさせてください。 「さて、ほらお前も何か話せ。あんなに心配してたじゃねぇか」 俺には触れず会話を進めてくれる先生たちには、俺の気持ちがわかられてるのかな? イロハや佐古からの心配そうな視線を受け止めながら、ハルの肩口に顔を埋めたまま耳だけを会話に傾ける。 「……?」 さっきから、一度も会話に参加してない子。 ずいっと梅谷先生がその背中を押して前に出したのが分かった。 「………っ」 「ん、タイラ? どうしたの?」 びっくりするくらい目を大きく見開いて俺たちを凝視したまま、全然動かない体。 「……っ、ハル……さま、〝アキ〟……さまぁ…」 「っ、」 苦しそうに名前を呼ばれて思わず前を向くと、タイラと目があって。 瞬間、その目からボロボロ大粒の涙がこぼれ落ちて来た。 「ぅ、ぅうぇ……っ、ぉかえり、なさ……っ!」 「ーーっ、ぁ、タイ…ラ……っ、タイラ!」 よろよろ近づいてくるタイラの手をつかんで、ハルと一緒にベッドの上からぎゅぅぅっと抱きしめた。 「~~~~っ、ハルさまっ、アキさまぁ……っ!」 「タ、イラ……」 タイラはあの場には居なかったけれど、でもたくさん手伝ってくれた事を聞いてる。 「おかえり、なさ…っ、おかえりなさいぃぃ~~!!」 「ーーっ、ぁ」 〝おかえりなさい〟 「ふふっ。ほらアキ、おかえりって言われてるよ?」 「ハ、ル……っ」 ポンッ 「「っ、ぇ?」」 「おかえり、アキ」 「ハルくんもですよ? やっとおかえりですね」 「ハル様、アキ様、おかえりなさい」 「ふたりともおかえり!」 「おかえり、待ってた」 「……おせぇぞ」 力強くも優しく髪を掻き混ぜてくれる、みんなの大きな手。 笑ってくれてる、優しい顔。 (~~っ、あぁ) 「「ただいま、みんな……!」」 暖かくて暖かくて胸がいっぱいになってしまって。 ボロッと、我慢してたものが一気に溢れて頬を伝った。 (こういう時、なんて言えばいいんだっけ?) ……あぁ、そう。 「っ、ありがと!」 ぐしゃぐしゃの顔なまま笑うと、安心したようにみんなも微笑んでくれて。 そんな俺たちの涙を、オロオロ不器用にタイラが拭ってくれたーー 「龍ヶ崎は、後で来るそうです」 「家で少しやることがあるって言ってたな」 落ち着いてから、イロハとカズマが持ってきてくれたお茶とお菓子を頂く。 「そうなんですね」 「つってももう夕方だからなぁ。また明日になるかもしれねぇな」 「クスクスッ、どうでしょうね。龍ヶ崎にはアキ様が目覚めたと私から連絡しましたので、恐らく顔を見に来るとは思いますが」 「ふふっ、愛されてるねアキ!」 「ラブラブですね~アキさま~~!」 「ぇっ、え!」 (なんで俺そんな事言われてんの!?) 訳がわからなくてバッとまたハルの背に隠れると、面白いというふうにまた笑われてしまって。 そのまま、ぎこちないながらも何とかみんなと話をして、夕ご飯が運ばれて来る頃にみんなは「明日も来るね」と帰って行った。 それからハルと一緒にご飯を食べて、少しゆっくりして。 消灯時間前に「僕も帰るねっ」と、隣の病室に帰っていく。 「おやすみアキっ」 「ん、おやすみハルっ」 パタンッ、と静かに扉が閉まった。 (……ひとりだ) 誰もいない、個室の病室。 結局レイヤ、は来なかったな…… ちょっとだけ寂しくなって、ネックレスの玉をキュッと握る。 みんなに〝アキ〟と呼ばれることに、正直まだ違和感を感じる。 それに、まだ多少のわだかまりもあってーー また、元気になったらちゃんと話したいな…… 謝って、みんなともう一回ちゃんと友だちになりたい。 ーーそして、レイヤとも。 父さんの前ではあぁ言ってくれてたけど、まだちゃんと面と向かっては言われてないし…… 屋上に迎えに来たくれた時も、好きだの愛してるだの…そう言った話をする暇はなかった。 (実際のところ、俺のことどう思ってんの…かな……) ちゃんと聞くのが、怖い。 「実は嘘でした」なんて…「気味が悪い」なんて…言われないよね……? あの夢の中で見た言葉たちは、何気にトラウマのようになっているみたいで。 「………ふあぁぁ…… とりあえず、明日考えようかな」 あんなに寝たのに、凄く眠い。 今日は、みんなとの壁がちょっとだけ薄くなった気がした。その収穫だけで、充分だ。 明日はもっと、近づけるかな……? まだハルの後ろにいるけど、ちょっとずつ距離を詰めても……大丈夫だろうか? そんな事を考えながら部屋の電気を消して、落ちてくる瞼に逆らうことなくゆっくりと目を閉じたーー

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