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「私たちは、外部に一切漏らさぬよう完璧に情報を遮断しました。勿論一族の者にも。 だが、屋敷を訪れる一部の親族には止む終えなかった。事情を話し固く口止めいたしました」 親族は忠実に言いつけを守り、外の者やそれほど近しい一族ではない者に漏らすことは無かった。 が、それでも嫌がって必要以上に奥様とアキ様には近づかないようになり、ハル様のみを可愛がるようになってしまった。 「ーーここまでが、アキ様を小鳥遊の息子であると告知していなかった理由です」 話し終えて一息吐き、ゆっくりと皆さんを見まわす。 各々が、微動だにせずじっと俯いていた。 「……はっ、納得がいかねぇな」 「っ、佐古くん…?」 「アキがずっと隠されていた理由は分かった。 だが、はっきり言ってこいつはなにも悪くねぇじゃねぇか。何でそんな大人の事情で勝手にこいつに心の傷負わせてんだ」 「申し訳ないが、俺も全く同じ意見です。 確かにハルとアキの母親はどうしようもない悩みを抱え苦しんでいたのかもしれない。ですが、それをカバーしようと自分の子を隠してしまうのは、如何なる理由があろうともしてはいけない事だったと思う。 貴方がたは『それでいいのだ、ゆっくり慣れていこう』と肯定するのではなく『母親は貴方なのだから、もっとしっかりしなさい』と多少なりとも厳しくすべきだったのでは?」 「はい、お二方の言う通りで御座います。 梅谷様の仰る通り、我々は奥様ともっとぶつかり、その心を芯から支えるべきだった。ですが、生憎社長も私も男で母親というものはどうあるべきかを語る術が無かった……その結果、こうしてアキ様を追い込んでしまう形となりました。 アキ様には…そしてその状況を見て心を痛めるハル様にも、私どもは頭が上がりません」 〝前に進む〟のではなく〝現状を維持〟して、それを受け入れてしまった。 ーー奥様を肯定して受け入れた、拭いようの無い私たちの責任だ。 「……ここまでで皆様の疑問は解けたのではないかと思うのですが、この先から今に至る話もお聞きになりますでしょうか? 社長からは〝全てを話すように〟と指示を受けておりますので、皆様が望むのであればもう少しだけお時間を頂きたいと思っております」 「ーーーー聞かせてください」 「っ、ア…キ……?」 先程まで龍ヶ崎様の肩を借りて涙を流していたアキ様が、涙目のまま真っ直ぐに私を見ていた。 「そこから先の話も…全部全部、知りたいですっ」 「僕も、教えてください」 ハル様も同じく、私を真っ直ぐ捉えていた。 「ハルも…?」 「うんアキ。あのね、あの屋敷で僕は母さん達に沢山手を伸ばしてもらったけど、でも僕が見てるのはいつだってアキだけだった。だから僕もアキと同じ視点しか分からないんだよね。 隠すに至った話は分かったけど、隠してから今に至るまでの過程も、全部知りたい。 ーー知らなきゃ、前に進めないよ」 「っ、それ、俺も今思って……」 「ふふふ、やっぱり?」 「うん。ちゃんと全部を知って……時間はかかるだろうけどちゃんと自分の中でかみ砕いて、それから前を向きたいって」 「うん。僕も同じ考え」 隣同士手を繋ぎあって、1番辛い筈なのに共に笑いあっているアキ様・ハル様は、本当にしなやかでお強い。 そして、その様子を見守るように優しく笑う皆様の顔を見て、とても安心する。 (あぁ、もう大丈夫だ) お2人には、こうして支えてくださる方々がおられる。 本当に、大きくなられた。 この揺るぎない関係を築き上げたアキ様。 それを真っ向から壊し、再び関係を構築して我々にぶつかってこられたハル様。 ーーもう、お2人ともしっかりご自身の足で立つことができている。 (幼い頃に話したきりお会いしていながったが、本当に……よく成長されましたね) 互いが互いを思い合っての成長なのだと、思う。 双子とは、誠に不思議な存在だ。 目を閉じて、深呼吸をして再度目を開ける。 「それでは、もう少しだけお付き合いくださいませーー」

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