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「〝ようやくお前たちを自由にできた。だから、暫くはもう帰ってくるな〟と」 『もうあの子たちを守ってくれる力が、ちゃんとあの子たちの周りに揃っている。頼る形になるが、2人の幸せの為にはこれがいいのだろう』 「奥様も、それに同意しております」 あの時口から放った言葉の所為で、酷く自身を追い詰めているのらしい。 「ハルとアキにはもう会わない」と何度も口にしているそうだ。 「奥様には、現在社長が付いておられます。 ですので、本日ここへは私がまいりました」 「そう、だったんですね……」 (母…さん……) 「あの…それだったら、僕たちって退院したらどうすれば………」 「あ、本当だ…どうしようハル……」 「その件なら大丈夫だ」 「ぇ、レイヤ?」 「小鳥遊社長から直々に申し出があった。 〝暫く息子たちを頼めないだろうか〟と」 「「………ぇ」」 「バラバラになってしまった家族をひとつにする為、今一度時間が欲しい」と言った父さんに、龍ヶ崎社長は笑って了承したという。 『小鳥遊社長、何をかしこまっているのですか? 我々の息子は婚約しています。だから私たちも既にひとつの家族で、もうそういった繋がりの中にいるのです。 悩んだ時はお互い様でしょう? 利用してくださいよ』 「そう、なんですか月森さん?」 「はい、間違いございません。 そして社長も、改めて奥様と向き合うと仰っております」 『私は、逃げていたのだろうな月森。 アキを守ると言ってここまで隠し通し、それが結果的に全ての負担をアキへ押し付ける形となってしまった。ハルまでもを傷付けている……なんて酷い父親なのだろうな。 私もフユミと向き合いその心に寄り添い、もう一度、着実に一歩一歩歩んでいきたいんだ。 身勝手なことなのかもしれないが、私たちに時間を頂きたい』 「アキ様。 今、我々はアキ様を正式に告知する為の準備に入っています」 「ぇ、」 「まだ少し時間はかかりますが、近いうちにお知らせします。ミナトにも手伝ってもらってるのですよ?」 「そ、うなんですか……?」 「はい。 私は貴方の月森ですので、手伝うのは当然です」 (あぁ、そうか) 月森さんが訪ねてきた時、レイヤと先輩は来るのがわかっていたような態度だった。 それは、既に2人が俺たちのため動いてたからなんだ。 ぎゅぅぅっと膝の上のぬいぐるみを抱きしめる。 父さんが買ってくれて、母さんが捨てて拾って、月森さんがずっと持っててくれたぬいぐるみ。 みんなの想いが、詰まってるね。 ーーねぇ、母さん。 (待ってるよ、ずっと) 子どもっておかしいね。 どんな母さんでもさ、やっぱり母さんは母さんなんだよね。 だから、 (次会ったら、絶対絶対 抱きしめてね) ハルと一緒に、えへへと笑いあった。 その後、月森さんは梅谷先生や櫻さんと少し話して帰っていった。 みんなも帰っていって、「今日は疲れただろうから、ゆっくり休めよ」とレイヤに頭を撫でられて。 それから、ハルと一緒に夜ご飯を食べて。 この日は「ふたりで寝てもいいよ」と医者から許可を貰って、一緒のベッドで眠った。 それは、本当にぐっすり眠れて。 凄く 幸せで……… この先何があるかは正直分からないけど、きっとハルやみんなと一緒だったら大丈夫なんだと、思ったーー [真実編]-end-

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