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「なぁ、あの小人の中に一匹だけじぃさんが紛れ込んでるんだぜ」 「ぇ、うそっ」 「ククッ、探してみろよ」 「えぇぇー……」 噴水の淵に座るレイヤに後ろから抱きかかえられながら座って、一緒にツリーを眺める。 どんなに見上げても全く飽きる事はなくて、わいわい話しながら2人で笑い合って。 レイヤと一緒にいるのは、凄く落ち着く。 イロハたちや佐古とはまた違った感覚。 ハルとも違う。 (安心…かな? ほわほわする) 後ろにいる体温は、変わらず優しい。 ってか、 (無理でしょこれ…) おじいさんだと……? どこにいんだよまじ、全然わかんねぇ… 「なぁアキ?」 「ちょっと今集中してるから話しかけないで」 「少しくらいいいだろうが。この服は親父たちからか?」 「あ、そう!ハルとお揃いなんだっ!」 「へぇ流石だな。オーダーメイドだしよく似合ってる」 ぁ、やっぱりオーダーメイドなんですか… ですよね……帰ったらハルにも言っとこう。 (そうだ、それと) 見上げてたツリーから視線を落として、袋を漁る。 「レイヤ、はい」 取り出したのは、漆黒のマフラー。 レイヤの方を向いて、その首に巻きつけた。 「自分で編んだのか?」 「そう。メリークリスマス、レイヤ」 ニコリと笑うと直ぐにキスが返ってきて、その手が優しくマフラーに伸びる。 「へぇ、よく編めてんなぁ。初めてだったんだろう?」 「トウコさんの教え方が凄く上手くて。本も返してもらったんだ」 「そうか。 この赤い線はお前の色か?」 「ぁ、そ、そうっ」 漆黒の中に少しだけ赤い糸を入れてみた。 見えるか見えないか程度…ちゃんと見ないと分からないくらい。 「控えめだなぁ……もっと大胆に入れやがれ」 「ぇ、いやだって…は、恥ずかしいし……」 「お前な…はぁぁ………」 ぎゅぅっと抱きしめられる。 「おいアキ。俺はお前のなんだぞ?」 「っ、ぅ、うん」 「他の誰かに取られても良いのかよ」 「!? 嫌だ!」 「別のやつから貰ったマフラー巻くのは?」 「い、嫌……」 「どっかの知らねぇやつとこうやって抱き合っても?」 「嫌っ、やだから…」 (そんなの、絶対嫌だ) 凄く我儘だけど、でも…… ーーレイヤの隣は、俺だけがいい。 「だろ? だったらもうちょっと大胆になりやがれ。自信持って、ちゃんと前向いとけ」 「っ、ぅん…」 「大丈夫だアキ、俺から離れていくことはねぇよ。 まぁお前を離すつもりもねぇがな」 「? でも、これから先何があるか…」 「確かに何があるかは知らねぇ…… が、こういうのは先に惚れた奴が弱ぇって言うだろう?」 「へ、レイヤのが先だったっけ?」 「俺が先だろ。6月決算の出来事忘れたのか?」 「えぇ…あー……?」 「っ、お前なぁ………」 「あはは…え、でもあれのどこに惚れたの?」 俺、ただ雷が怖くて怯えてただけだったのに。 「んーそうだな…言葉で言い表すのは難しいな……」 「クスクスッ、そうなんだ」 森の中にある小さな場所で、2人だけの空間に居心地の良さを感じながら そのまま、思い出話に花を咲かせてまたわいわい話しあった。 「っ、」 「…流石にそろそろ冷えてきたな」 突然寒気がきてブルッと震える。 いくらポンチョを着てるとはいえ、長時間いると流石に体が冷えてきた。 「アキ。今年のクリスマスは楽しめたか?」 「うん。こんなに楽しいの…初めて」 こんなにプレゼントをいっぱい貰ったのも、初めて。 まるで全てが夢のようで、すごくふわふわしていて…… 嬉しくて嬉しくてみんなから貰ったプレゼントが入ってる袋をぎゅぅぅっと抱きしめると「よかったな」と頭を撫でられる。 「学園のパーティーも、賑やかだっただろう?」 「凄かった!まるでびっくり箱!!」 (あぁそっか、やっぱり) 俺がみんなと楽しめるようにって、レイヤが計画立ててくれたんだね。 会えるかなと思ってた佐古とも会えたし、みんなにもプレゼント渡し切れたし…… 「………ねぇ、レイヤ。 ありがとう」 「ん?」 「俺、レイヤと出会えて良かった」 レイヤと出会えて、みんなと出会えて 俺は、もっと俺になれた気がする。 (俺を、ハルの中から見つけ出してくれて) 遠い場所にも、迎えにきてくれて。 一緒に家まで行ってくれて。 病院にも、来てくれて。 たくさんたくさん……支えてくれて。 「本当に…ありがと、っ、」 もっとちゃんと、大きなツリーが見ていたいのに もっとちゃんと、レイヤの顔が見ていたいのに 視界がぼやけて、上手く見えない。 「ーーあぁ、俺の方こそ」 その涙を、大きな手が優しく拭ってくれた。 「俺も、お前に助けられてばかりだ。 知らねぇ事もたくさん知れて、いろんなことを学んだ。 今の俺があるのは、お前のおかげだ、アキ」 「っ、」 そっと頬に手を添えられて、暖かいキスがまた落ちてくる。 (あぁ、あったかい……) もっと欲しくて顔を近づけると、もっと強く唇を塞がれた。 体の奥がじんわり熱くなってきて、キュッと服を掴む。 「ん、ふぅ…ん……」 「アキ、好きだ」 「ーーっ、」 俺の耳に、そっと呟かれて。 (あぁ、) もう…だめだ………っ、 「ね、レイヤ…もっと欲しい……」 「ん?」 体の奥が、熱くて熱くてたまらない。 (もっと…もっとレイヤが欲しい) 目の前のマフラーが巻いてある首にぎゅぅっと抱きつくと、可笑しそうに笑われた。 「もうツリーはいいのか?」 「まだ見たいけど、でもっ」 「じぃさん探し切れてねぇのに?」 「うぅぅ……」 (それは、確かに悔しい) でも、 でも、それよりも今は…… 「俺を、レイヤでいっぱいにして、あたためて……?」 (貴方が、欲しい) ビクリと震えたレイヤが、「ははっ」と笑いはじめる。 「お前、それどこで覚えた?」 「?」 「無意識か…ったく、お前は……」 深いため息を吐いて、がばっと横抱きにされ立ち上がった。 「煽った責任、取ってもらおうか」 「ーーっ、ぅん」 赤くなった顔を隠すように、目の前の肩に顔を隠した。

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