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sideアキ: それから

「あっ!おじいさん見つけた!」 次の日。 昼くらいに目を覚ました俺はやっぱり途中から記憶が無くて、とりあえずレイヤを怒った。 (まだ慣れてないのに…もっと気ぃつかえよ!) 腰も痛ぇし本当なんだこれ。 でも、最中は凄い…幸せなんだよなぁ…… 気持ちよかったし、あったかかったし… だが、それとこれとは別だ。 限度があるだろ限度が! ベッドから睨みつける俺に「はいはい」と苦笑しながら、クシャリと頭を撫でてくれた。 今日は学校も休みだから、そのまま2人でゆっくりくつろいで。 夜になる頃、ようやく歩けるようになった俺は再度リベンジをする為また森の中に来ていた。 「やっと見つけたか」 「あそこ!あの星の近く!!」 「ククッ、そうだな」 あんなに高い所にいたのか。 でも星が光っててそれに照らされてたから、見つけやすかったのかも…? 「ねぇ、このツリーは今日で終わりなのか?」 「そうだな。クリスマスは今日までだ」 今日は25日。 クリスマスのたった2日間の命なんて…… 「ま、形あるものはいつか壊れる。これの場合はそれが早かったってだけだ」 「でも、レイヤからのプレゼントなのに……」 「あの花火だってそうだっただろ?」 頭に手が乗って、顔を覗き込まれる。 「無くなる物だからこそ、価値があるんだ。 無くなってもその思い出は映像となって記憶され、心に残る。それが良いんだ」 (無くなる物だからこそ…価値が……) 確かに、あの夏の花火も今のツリーも心の中に鮮やかに残ってて、一生忘れたくはないと考えている。 (あぁ、そっか) 心に思い出を残す事が、レイヤからのプレゼントだったんだな。 「ねぇ、レイヤ。ありがとう」 (俺、一生忘れない) この2日間の出来事を、みんなから貰った幸せを。 目に焼き付けるようにひたすらツリーを見上げる俺を、後ろから優しい体温が抱きしめてくれた。 それから、レイヤと一緒に屋敷へ帰ってハルに改めてお礼を言って。 「みんなから貰ったプレゼント開けようよ!」と2人でどんどん箱を開けていった。 イロハたちから貰った物は全部ハルとお揃いのものばかりで、嬉しすぎて一緒に喜び合った。 親衛隊やクラスメイトからの物は、ぴったり均等になるよう2人で分けて。 その様子を、トウコさん達が微笑ましそうに見てた。 そしてまた月曜日が来て…と言っても、その日は終業式だからどうせ明日から冬休みで、それに参加するふたりを見送って。 帰って来る頃玄関の扉を開けると、先生と月森先輩も一緒だった。 部屋へ案内して、ハルと一緒にお茶とお菓子を準備する。 「お前は、長らく海外にいたという設定にする」 「海外…ですか?」 「そうだ。それも病気の療養でな」 ハルも体が弱いし、双子ということもあってきっとこの言い訳が1番バレにくい。 「お前はハルより酷い状態だったから海外で治療を受けていた。お前の精神の安定の為、小鳥遊はお前の事を決して外部に漏らさずひたむきに隠し治療に専念させた。 そして、この度容態が良くなったので日本へ帰国。それにより来年度からハルと同じ学園へと転入させる事にした。以上だ」 「アキくんには申し訳ないのですが、これが一番の策かと。私たちに合わせていただけないでしょうか?」 「大丈夫です。寧ろここまで計画立ててくださって…本当にありがとうございます」 「アキ様、私もサポートしますので。 人の噂も七十五日。4月に入って学年が代わる頃…再び春が訪れる頃には、もう何でもないことの様になっている筈です」 「はいっ」 「それまでの辛抱ですので…」と、先輩に優しく頬を撫でられた。 「アキ、僕も助けるからね。フォロー入るから」 「ハル…ありがとっ」 「丸雛たちにも既に共有済みだ。ま、来年も一緒のクラスだろうよ」 この学園のA組は、3年間同じメンバーのまま終わる事が多い。 学力特化のクラス編成な分、あまり変動する事が無いそうだ。 (ってことは、俺またあのクラスに帰れるのか…) 一緒に授業を受けて、笑い合ったあのクラスに。 「後はお前の寮の部屋とか学校の席とかだが…… それは、あらかた予想が付いてんだろ」 「はい」 「ふふふ、彼はアキくんへ1番初めに教えたそうですね。本日私たちにも共有がありました。丸雛くんたちにも」 ある意味、本当にナイスタイミング。 それでも……寂しいものは寂しい。 「ま、近々また顔出すだろうしまたあいつともゆっくり話せよ」 「そうしますっ」 「クスッ。それでは、そろそろ帰りましょうか」 「良いお年を」と、挨拶してそれぞれ帰って行った。 それからあっという間に年越しが来て、龍ヶ崎家のみなさんとこたつでわいわい過ごした。 楽しくて楽しくて、本当にびっくりするくらいいっぱい笑って。 「明けましておめでとうございます」と挨拶をすると、レイヤがみんなの前で俺にキスしてくれた。恥ずかしかったけど幸せだった。 俺はまだ外に出られないから神社には行けなくて、でもその分みんながお守りとかを買ってきてくれて。 ただ嬉しくて…あったかくて…… そうやって、冬休みを過ごして。 それから、それからーー

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