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sideカズマ: それは、イロハとの思い出 1
「初めて会ったのは、幼稚園生の頃だった。
イロハは女の子としてうちに紹介されて、だから俺も両親もみんなイロハを女の子として扱ってた」
お人形のようにくるくるした長い髪の毛のお母さんと、そのお母さんにそっくりなくるくるした髪の子。
目が凄く綺麗で、俺よりも小さくてちょこんとしてて、恥ずかしいのか一生懸命目線を下にさげていた。
『これから同じ幼稚園に通うのよ』と紹介され、俺がこの子の手を引いて行かなきゃいけないんだと思った。
「幼稚園でも当然、イロハは女の子だった」
みんなに『イロハちゃん』と呼ばれ、女の子と一緒に遊んでいた。
イロハは他の女の子よりもずっと可愛くて、俺たち男子はみんなイロハのことが好きだった。
それに俺が嫉妬したりとかして……本当、可愛い幼稚園生だった。
「今もそうだけど、本当によく笑う奴だったんだ。ままごととか折り紙とかが好きで、いつも付き合わされてた」
『きょうもわたしがおかあさんするから、かずまくんおとうさんね!』
『おれも、たまにはおかあさんしたい…』
『だめ!おかあさんはいろはなの!おりょうりいっぱいやりたいの!』
『め!』と言われながらも、たまには『おとうさんもする?』とおもちゃの包丁を貸してくれたりして、お隣さん同士本当に仲が良かった。
「丸雛と矢野元も、仲がいいの?」
「そうだな。俺の両親もイロハの母さんとは仲がよかった。イロハの父さんは見たことなくて…多分、隣に引っ越してくる前には離婚してたんだと思う」
「そっか……」
『あら、イロハちゃん今日も遊びに来たのね!』
『こんにちはおばさん!あがってもいい?』
『どうぞ〜』
幼稚園が終わるといつも遊びに来ていた。
可愛らしいワンピースやふわふわのスカート。髪もキラキラしたゴムでいつもオシャレにして、凄く輝いて見えた。
暗くなる頃には、俺がちゃんと隣の家まで送り届けてた。
インターホンを鳴らすといつもイロハのお母さんが出てきてくれて、『送ってくれてありがとう』と頭を優しく撫でてくれて。
『カズマくん、イロハのこと好きかしら?』
『うんっ。すき』
『ふふふ、ありがとう。カズマくんみたいな同い年の優しい子がいてくれて良かった。
カズマくん、これからもイロハのことよろしくね?』
『うん!』
『この子は女の子だから、俺が守らなきゃいけないんだ』という、よくある謎の使命感が生まれてた。
ーーけど、
「小学生に上がってから、俺たちの世界は一気に崩れたんだ」
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