389 / 533
sideアキ: 初めまして、イロハのお母さん 1
ピンポーン……
次の日。
カズマの手が、お隣のインターホンを強く鳴らした。
3人で話し合った後、レイヤと先輩も入れて改めて話し合って、結果「訪ねる」という結論に至った。
(生徒会長だっているし、何か言われたら「うちの生徒が1週間も休んでることに関して訪ねる為に来た」って言えば大丈夫のはず)
これは、あくまでも丸雛の問題…イロハの家族の問題だ。
それにイロハは〝ケンカ〟と言った。俺たちが首を突っ込むべきではないというのは前提にある。
だから、イロハがどう動こうとしてるのかを知り、その手助けをする方に回ろうということになった。
お母さんとどうなりたいのか、この事態にどう収拾をつけたいのか……
それを明確にしてから、 イロハの気持ちを優先したいと思ってる。
だから、取り敢えず先ずはイロハに会いたい。
早く、早く。
今どんな顔をしてるのか……心配だけが積もるばかりで。
ガチャッ
「あら、カズマくんじゃないっ!」
扉から顔を覗かせたのは、イロハそっくりの女の人。
(ぁ、もしかしてこの人が……)
「こんにちは、ご無沙汰してます」
「クスクス、大きくなったわね〜。後ろにいるのはお友だちかしら?」
「はい。イロハが心配で来ました」
「えぇ、そうだろうと思ったわ。
どうぞ上がって?」
優しく微笑まれ、ゆっくりと扉を開けてくれるイロハのお母さん。
(綺麗な人…綺麗というより、可愛い……?)
イロハと同じ、明るいくるくるの癖っ毛。
それを長く伸ばしているから、まるで本当のお人形のよう。
「こちらの月森…スズちゃんがお世話になってるみたいね。ごめんなさいね、迷惑かけちゃって」
「いいえ、全然。丸雛の月森はよくうちへ訪ねて来ていたので大丈夫です。今もうちの月森と一緒にいますよ」
「ふふふ、月森同士本当に仲が良いわね。
カズマくん、イロハのこと、気に留めてくれてありがとう。
皆さんも、ありがとう」
俺たちを振り返って、心からの笑顔でお礼を言われる。
それにびっくりして、思わずレイヤの袖を握った。
(す、ごい……)
自分の子を心配してくれて嬉しいというような、一点の曇りもない綺麗な笑顔。
〝自覚がない〟とはこんなにも怖い事なのだろうかと、心臓が冷える。
「ぁ、の…」
「ん? なにかしら」
「イロハは、今どこに……?」
同じように少しだけ青ざめてるハルが、上擦った様な声で聞いた。
「あの子は今自分の部屋にいるわ。
取り敢えず上がってちょうだいっ。飛び切りのお菓子があるのよ」
ともだちにシェアしよう!