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sideイロハ: ぼくはエッチがしたい

「ねぇねぇアキ、ハル」 「? 何イロハ?」「どうしたの?」 「エッチってどうやってするの?」 「「…………は?」」 丸雛の件から1週間ほど経った、ある日。 移動教室だから「一緒に行こうよ!」って待っててくれてた2人の教科書と筆記用具が、バサバサバサ!!と大きな音を立てて落ちた。 「え!どうしたの2人ともっ!?」 「イ、イイイイロハ!? ここどこだと思ってんの!?」 「教室…だけど……」 「そう、そうここ教室!教室だよな!?」 「んん?」 あれ、今しちゃいけなかった? カズマは授業の準備担当で先に移動してるから、今がチャンス!っと思ったんだけど…… 「…うん。幸いみんな移動しちゃってるから、教室には僕らしかいなかった……よねアキ?」 「だ、だと思うけど…」 「聞かれちゃまずいことなの?」 「いやっ、そういうわけじゃないんだけど…恥ずかしくないイロハ?」 「え、だってみんな友だちじゃん!何が恥ずかしいの?」 「うん…いや、そうなんだけど……けど………」 「??」 若干涙目になりながら、アキが困ったようにハルの方を向いた。 『『大丈夫だよ』』と、丸雛の結果を受け入れてくれた2人。 『イロハの家族は変じゃないよ』『寧ろ僕たちの家族も変だから!』と変わらず接してくれる。 お母さんがおれを〝女の子〟と思ってることに関して、結局直すことをせずそのままにした。 今お母さんを失ったら丸雛は大変なことになるし、本家に戻ってしまったスズちゃんもきっとそんな事望んでない。 それに、お母さんは性別以前に、ちゃんとおれ自身のことを見てくれてるって分かったから。 だから、このままでもいいかなと思った。 それを『人間いろんな人がいるし、そんな形の家族があってもいいじゃないか』と会長たちも言ってくれて。 今も、基本は〝おれ〟だけど時々一人称がずれる自分を受け入れてもらってる。 (そんな2人だからこそ、相談してみたんだけどなぁ……) 何が駄目だったのか分からなくて〝?〟を浮かべたまま、おれもアキと一緒にハルの方へ顔を向ける。 「………ふふっ。もう、しょうがないなぁ」 苦笑気味に、おれとアキの頭にポンっと手がのった。 「イロハ、その質問放課後でもいい? カズマには僕から何かしら言っとくから、今日は一緒に僕らの部屋帰ろう?」 「わかった!」 「アキ。アキは帰ったら質問攻めにあうと思うから、準備してた方がいいかもねぇ〜」 「ゃ、ちょ、嘘だろハル……っ」 「涙目にならないの!ほら、イロハが困ってるでしょ? 先輩として答えてあげなきゃ」 「うぅぅぅ………」 (…? アキ?) え、何が恥ずかしいの? だって会長と恋人ってことはそういう事してるっていうの、きっとみんな知ってるよ? 「…イロハってさ、案外大胆なのな」 「そうかもね。まぁ素直なのはいい事だよね」 「うん……?」 「さ、取り敢えずこの話は放課後!僕らも移動しよ!」と背中を押され 移動教室までの道のりを急いだ。

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