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sideイロハ: 勝負の時 1
「ん、もうこんな時間か」
(きた)
夜ご飯を終えソファーでくつろいでると、ポツリと隣でカズマが呟いた。
「そろそろ寝るか」
「うんっ」
立ち上がって直ぐ歯磨きをして、寝る支度をして…
「カズマ」
「ん」
付き合い始めてから恒例になった、寝る前の優しいキス。
いつもはここで終わり。
だけど、今日はーー
「ね、カズマ」
「? なんだ?」
「やっぱり…一緒に寝ちゃダメ……?」
そこに一歩、踏み込んでみる。
「昨日からどうしたんだ? やっぱり寂しいのか?」
「うん、寂しい」
「クスッ、もう俺たち高校生だ。ちょっとくらい我慢できるだろ?」
「違う!そうじゃなくて…
ーー恋人として、寂しい……」
「っ、」
別に変なこと言ってない。
ただ、付き合ってるのに別々の部屋で寝るのが寂しいって言ってるだけ。
「ねぇカズマ。
おれたち、もう友だちじゃ…親友なんかじゃないんだよ?」
いつまでこの距離感なの?
付き合ってまだ1週間と少し。
だけど、そんな日にちなんて関係ない。
「おれ…もっとカズマに近づきたいよ……っ」
目の前の服を両手でぎゅぅっと握りながら、顔を見上げる。
「ね、カズマ…………」
おれのこと、抱いて……?
「ーーーーっ!」
自然と上目遣いになってたおれを、バッ!と強引に引き剥がした。
「やめろ、イロハ」
「な、なんで…!」
「お前にはまだ早いだろ」
「え……?」
顔を片手で覆って「はぁぁぁ…」とため息を吐くのを、呆然と見つめる。
「まだ付き合って少ししか経ってない。そういうのは、もう少し気持ちが落ち着いてからでいいだろう」
「は? なんd」
「お前は浮かれてるんだよ、多分」
「ーーぇ?」
(浮か、れ…てる……?)
それって、どういう
「初めて恋人が出来て、早く次のステップに行きたいって心が浮き足立ってるんだ。だから、次に行くのそれが落ち着いてからでいい…この距離感に慣れてからでいい。
付き合うまでも長くかかったんだ。俺たちは、俺たちのペースで行けばいい」
「……カズマは、どうなの…?」
「俺か? 俺は、もうずっとこうなる事を望んできた。だから、それが叶っている今…とても幸せだ」
(嘘だ……)
「俺の気持ちにイロハが追いつくまで待つし、イロハも変に焦らなくていい」
(そんなの…)
「まぁ確かに、会長とアキを見てたら焦りたい気持ちもわかる。でも」
「ーーそんなの、嘘だ!!」
「っ、イロ、ハ? ……!」
びっくりして固まる腕をガッ!と掴み、ここから近い方…おれの部屋へと連れて行く。
そのまま思いっきり両手で投げるように、長身をベットに沈めた。
「な、イロハ…お前っ」
その上に馬乗りになって、カズマの顔の横に両手をつきながら見下ろす。
「ぼくを、舐めるなよ」
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