431 / 533
4
イロハとカズマから貰ったプレゼントも、ハルとお揃いの物だった。
佐古のプレゼントは夕方くらいに郵便で届くらしい。既にお父さんと一緒に色んな国へ行ってるようで、『行った場所でそれぞれ買った。まぁ寄せ集めみたいなもんだ。量あるから期待しとけよ』と笑われた。
(楽しそうで、良かった)
最近のことを話してくれる佐古は、前より笑顔が増えて少し饒舌になった気がする。
やっぱ海外に行くと話さなきゃいけないもんな。後継としてずっと待っててくれたお父さんの為にも頑張ってるんだと思う。
ご両親が佐古のことを大切にしてくれて良かった…兄妹仲も相変わらずそうだし。
『ーーん、そろそろなんじゃねぇか?』
「あ、本当だー!もう来るかなっ?」
「…? なにが」
コンコンッ
「わぁおナイスタイミング!」
「はーい!」とイロハが玄関先にパタパタ走っていく。
「……? 今度はなに?」
「クスクスッ、まぁ待ってろ」
クッキーをつまみながら、ドアの方を見つめているとーー
「こんにちは、ハル様、アキ様」
「「へ、月森…先輩……?」」
ふふふと笑いながら現れたのは、先輩。
「矢野元くん、佐古くんもゆっくり過ごせましたか? そろそろかと思い、お迎えにあがりました」
「えぇ、大丈夫です」
時計を見ると、もう2時間ほどが経過していた。
時間経つのが早くてびっくり……
「そうですか。ではお2人とも、次の場所へご案内しますね」
「ぇ、次?」「まだ何かあるんですか…?」
もう十分幸せなのにこの先があるなんて…俺、心臓もつかな……
涙腺はもう壊れてしまった、感情が溢れて止まらない。
「よしっ、じゃあ2人とも立って!玄関へごーごー!」
「ぁ、待って、佐古元気でなっ!!」
「またゆっくり話そうー!」
『おー、俺も寝る。クアァ……おやすみ』
気怠げな欠伸とともにプツリと画面が切れて、それがなんとも佐古らしくて笑ってしまって。
「2人とも、本当にありがとうっ」
「佐古とも久しぶりに会えて良かった」
「んーん全然!引き続き誕生日楽しんでね」
「本当におめでとう、ハル、アキ」
「「ーーっ、ありがと!」」
見送ってくれる2人を背に、先輩と歩いていった。
「さぁ、こちらです」
「え?」「ここって……」
再び校舎へ戻り、案内された先は生徒会室。
コンコンッと軽やかに先輩の手が扉を叩くと、中から『入れ』という声が聞こえた。
(あれ? この声ってーー)
ガチャッ
「やっと来たか」
「レ…イヤ? どうして……」
「今日は家の会議だって言ってたのに…」
「あぁ? てめぇらが誕生日なのに誰がそんなもん入れるかよ。ほら、座れ」
(っ、嘘……)
金曜日に『明日明後日は会議だから』っ言われて、そうなのかと思ってたのに……
「さぁ、まいりましょう」
背中を押してくれた先輩と一緒に、生徒会室へ入る。
先輩、レイヤと一緒にいたのか。
だから親衛隊の処に居なかったんだ。
ソファーへ座ると、ちょっとしたご飯と可愛らしいサイズのケーキが1つ。
さっきから食べてばかりだけど、これくらいならお腹に入りそう。
「これ…2人が用意したの?」
「そうですよ。おふたりとも隊の方はいかがでしたか?」
「凄かったです!装飾も弾幕も…あとご飯も!」
「本当びっくりして…嬉しくて……」
まさか、こんなことが起こるとは思ってもみなかった。
思い出したらまた涙出てきそう……
「クスッ、それは良かったです。
さぁ龍ヶ崎、我々も始めましょうか」
先輩の手が、小さなケーキのロウソクに火を灯していく。
「ハル様、アキ様、お誕生日おめでとう御座います」
「おめでとう、ハル、アキ。 ほら火消せよ」
「「ーーっ、ありがとう!」」
本日何度目かもわからないロウソクの火に、2人で息を吹きかけた。
ともだちにシェアしよう!