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【side アキ】
(よ、良かった…おかしくなかった……)
車に揺られながら、隣でホッと息を吐く。
『週末空けとけ。外出かけるぞ』
『もう外出届けも櫻さんに出しといたから』と言われ、突然すぎてハルに言ったら「それきっとデートだよ!」となって。
デートなんてしたことないし服とか何着ていけばいいかもわからないしで取り敢えず月森先輩とイロハに相談して、わたわたこの日を迎えて……
ベレー帽なんて、正直被ったことなかった。
けど、「似合ってる」って言ってくれた。
嬉しいな 嬉しいな。
窓に映る自分の顔が、にまーっと緩んでるのが分かる。
ってか、何処行くんだろう。なんの話もされてない。自分の事でてんやわんやで、俺からも特に質問してなかった。
外なんて全然知らないし…まぁレイヤが案内してくれるんだろうから心配はしてないけど……
「レイヤ様、着きました」
「ん、分かった」
パッと停まったのは、知らない駐車場。
「時間になりましたら再びまいりますので」
「悪りぃな」
「いいえ、何かございましたらいつでも呼んでください」
運転手と話しながら隣からレイヤが降りる。
俺も自分の方のドアを開けようとしてーー
パタンッ
「ぁ」
「ククッ。ほら、手」
(うわ、エスコート……?)
外から手を差し伸べられ、緊張しながら自分のを乗せるとふわりと車から出された。
「それでは。
レイヤ様アキ様、いってらっしゃいませ」
「行ってくる」「ぁ、ありがとうございますっ」
バタンとドアの閉まった車が、ゆっくりまた駐車場を出て行く。
「さて、行くかアキ」
今日のレイヤは、黒。
全体的に黒い服でシックに…でもそんなにがっつりは決めすぎず少しラフにまとめている。
長い膝丈のコートをはためかせながら歩くのは、なんだか凄くカッコよくて。
俺…隣歩いてて大丈夫かな。
本当におかしくない? やっぱ俺の服って全体的にちょっと可愛すぎない?
こんな系統ものあまり着ないから、ハルたちにどれだけ大丈夫と言われてもやっぱりちょっと不安……
って、いやいや不安になることないか。
だってレイヤが「似合ってる」って言ってくれたじゃん。
うんうんそうだ!ってか別に毎日ここ来るわけじゃないし、今日だけなんだから変な目で見られてもどうでもいっか!!
おし、何かここまで来るともうどうでも良くなってきた!
いけるいける!頑張れ俺!!
「よしっ、行こうレイヤ!」
「ん? お前何か妙に元気になったな、どうした?」
「いや、なんかもう腹括った。大丈夫俺今悟り開いてるから」
「……? まぁいい。じゃ、行くか」
「何処へ?」
「ーーショッピングモール」
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