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「わぁ………っ!!」 初めて来た、大きな大きな商業施設。 大きな扉を抜けると、その先はびっくりするほど別世界だった。 (す、ごい……) 学校の校舎よりも広い空間。 長い廊下は先が全然見えなくて、その両脇に数々のテナントが軒を連ねている。 突き抜けの作りになっているから、上を見れば4階や5階まで全部見ることができて。 楽しそうに笑う沢山の人の声と、キラキラがいっぱいの空間。 まるで、夢の中のような…… グイッ 「わっ」 「ほら、入り口で止まってると邪魔になんぞ」 「ぁ、ありがと」 「こういうとこ初めてだよな?」 「うん、初めて!!」 「それじゃ、取り敢えず時間が来るまで店の中見て回るか」 「? 何の時間?」 「これ」 ヒラリと取り出されたのは、2枚の紙切れ。 「映画。お前映画館も行ったことねぇだろ? ジャンルは色々あったが、まぁ初めはアクションだな。俺は吹き替えより字幕が好きだからそれにしたけど良かったか?」 「映画…館……!」 「あ、別に興味ねぇなら観なくていいぞ。このモールすげぇでかいから全部見て回ってもいいし」 「!? 行く行く!行きたい!!」 何言ってんだよ!そんなのチケットが勿体ない!! ってかいつの間にそんなの用意してたの!? 「ククッ、なら時間までぶらつくか。 午後からの上映だから昼飯も済ませとかなきゃな」 「うん!…レイヤ、チケットありがとう」 俺、なにも用意してないや。 初めてで浮かれてて、自分のことしか考えてなかった。 恥ずかしいし申し訳ない…… 「別にこれくらいどうってことねぇよ。 ほら、それよりーー」 繋いでた手が離され、グッと腰に回された。 「時間は無限じゃねぇんだ、早く行くぞ」 「っ、そうだな」 折角学校じゃなくこんなとこに来てるんだ。 今を楽しまなきゃ、後で絶対後悔する。 顔を上げると、ニヤリと笑う顔。 いつもよりずっと楽しそうに笑ってて、つられて俺も笑い返した。 「おぉー……!!」 静かな空間に佇む、思ったより大きなスクリーン。 全体的に暗くて、かなり広い場所。 「俺たちの席はKの……ここだな」 「椅子がふかふかだー!」 「フハッ、そうだな」 ボフっと座ると、目の前いっぱい端から端まで全部画面。 凄い、これからここに映像が流れるんだよな? 「どうしよう、俺目2つで足りるかな」 「何言ってんだ、足りる足りる」 「まじ? だって凄い大きいよスクリーン…予想以上」 「大丈夫だって。人間が見るもんなんだから目が2つ以上必要ならやべぇだろ」 「そりゃそうなんだけど…ってか横の壁って全部音響?」 「いや、全部ってわけではないだろうがスピーカーは取り付けられてるだろうな」 「わぁ…そうなんだ……!」 両側の壁から音が聴こえるのだろうか。 凄い臨場感なんじゃ……? やば、めちゃくちゃ楽しみ。 「昼飯も美味かったな」 「ん!美味しかった!」 1階2階付近を暫くぶらぶらして、互いに気になったとこに入ってみたりして。 沢山のものが売られおりディスプレイはどれも華やかで、見るだけでも楽しかった。 その後休憩も兼ねてレストランの通りに行って、何処へ入るか悩みながら歩いて。 「お前お好み焼き焼くの本当下手くそな。クククッ」 「なっ、初めだけだっただろ!? 2枚目はちゃんと完璧に出来たし」 匂いにつられて「ここにしよう」となったお好み焼き屋さん。 自分たちで鉄板を使って焼くシステムで、お好み焼きなんか焼いたことなかったからとにかく難しくて…… 大体具材が多いのがいけないんだよ! 大量のキャベツに魚介類に豚肉に…あと天かすに。 ひっくり返した時のあの千切りキャベツが飛び出す瞬間は、自分で言うのもなんだけど大分傑作だった。 「レイヤは初めてじゃないのか?」 「まぁな。家でも作ってたし自分でも時々作るぞ」 「え、部屋で?」 「部屋で」 え、待っ、レイヤ1人部屋だよな? 1人でお好み焼きひっくり返して食ってんの……? (わぁ、今度ハルとイロハたち誘ってお邪魔しよう) そっかこいつ友だちいないんだった、そうだ。 月森先輩も誘わなきゃ。後、梅谷先生と櫻さんも。 「ついでにたこ焼きパーティーもしような、レイヤ」 「? 何言ってんだ……っと、始まるな」 ビーッというサイレンのような音と共に、どんどん辺りが暗くなる。 ざわざわ話をしていたお客さんたちも、一気に静かになってきて。 (わぁ……いよいよだ) ポソッ 「寒くないか?」 「大丈夫、ありがと」 暗がりでよく見えないけど、俺の耳元にあった顔が正面を向いたのがわかった。 微かな緊張と、わくわくする興奮と。 「……っ!」 キュッとカーディガンを握って、俺も正面のスクリーンを見た。

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