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3人で固まってるのに、視線がアキのほうに向いている。 双子な分スーツや髪型を変えてるから、見分けが付くんだろう。 確実なアキ狙い。会場でレイヤと親しげに話してたのを見て、こっちがアキだと気づいたんだ。 なんだ? 龍ヶ崎の敵対企業? 将来会社を継ぐレイヤの大切な人が来てるから、ちょっと声かけてやろう的な? あわよくば潰そうって? そんなのはーー 「ハル?」 「っ、なに?」 「大丈夫? なんか表情固いけど」 「大丈夫だよ」 「そう? 気分悪くなったら言ってね。外出よう」 「うん、ありがと」 アキは気付いてない。 歩き回るレイヤの背中を観察することに集中してるから。 それでいい。 そのために来たんだもんね。いっぱい学ばなきゃ。 (こっちは、僕らが……) ポツリ 「ハル様、来ます。 2時の方向、遠くから1人 歩いて」 「っ、」 早い、もう動くのか、どうすればいいだろう。 恐らく確実に悪いことだ。 なんとかして防ぎ、且つ2度と手を出させないように するにはーー (……あ、) 近づいてくる途中、ウェイターからドリンクを受け取り 素早く何かを入れた。 「…先輩」 「えぇ」 相手の手の内が見えた、ラッキーだ。 後は確実に飲ませようとしてくるから、徹底的に飲まなければいい。 きっと月森先輩が角のたたないよう会話を回してくれる。 何がなんでもアキを死守するはずだ。 そのうちに、僕はーー 「110番してきます。すぐ戻りますので」 何かを入れた。証拠が出来た。これで捕まえられる。 大勢の目があるし警察を呼ぶのは話題になるはずだ。そうすれば、2度と手を出してくることもなくなる。 危険なものを飲ませるのは歴とした犯罪だ。 (本当は3人でこの場から離れたらいいけど、それだと逃げられてまた次…ってなる可能性があるから) ーーここで、確実に捕まえておきたい。 先輩も 同じことを考えるはず。 「アキのこと、お願いします」 「…わかりました。電話が終わりましたらすぐに戻ってきてください。念のため、会場の扉は開けたままで」 「はい」 「アキ、僕ちょっとトイレ」 「あ、待ってハル、月森先輩連れてっt」 「大丈夫だってすぐ戻るから。じゃあね」 「えーー」 スルリと2人から離れ、人の間を縫いながら目立たないよう外へ出る。 奴がドリンクを取った瞬間、会場に散らばってた他の奴らも一斉にアキめがけて歩き出した。そういう手筈だったんだろう。 今頃囲まれてる。戸惑うアキを庇いながらあの人数相手に話をするのは、先輩でも少しきついんじゃ? 早く電話して、僕も加勢しないとーー 「あれ、小鳥遊様?」 「っ、え」

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