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誰もいなかった廊下。 振り向くと、いつの間にかウェイターが立っていた。 「どうされましたか、どこか具合でも」 「いいえ大丈夫です!ほんとになにも……」 (ーーあれ) このウェイター、胸ポケットにハンカチを入れてる。 会場のウェイターは何もしてなかったのにな。 このハンカチの 色は (奴らと…同じ……) しまった、仲間だ。 従業員にまでいるとはどこまで用意周到。 (どう、しよう) これじゃ 電話がーー 「顔色が悪いようですね。よろしければこちらを」 「っ、」 差し出してきたのは、先ほど何か入れたドリンクと 同じ色の飲み物。 …まさか、これにも入ってる? なんで僕に差し出すんだ、アキ狙いのはず。 実は僕だった? いや、そんな感じは微塵もなかった。 ーーもしか して、 「…あの、ハルのところに早く戻りたいんで大丈夫です」 「いいえ、その顔色ではお兄様も心配されますよ。 少し落ち着かれては」 やっぱり。 (この人、僕がアキだと思ってる) 外回りというか、会場外を担当する役割なんだろうか。 もしかしたら会場内からどっちがアキかの情報がいってないのかもしれない。 (っ、どうする) 早く振り切って電話したい。 アキたちが心配だし、勘付いた奴らに逃げられるのも嫌だ。僕らに喧嘩を売った分はきっちり片付けたい。 でも、この目の前の奴を… なんとか不審がられないように、振り切る にはーー 「ありがとうございますっ。それじゃあ、いただきます」 パッとグラスを取り、なんの躊躇もなく口を付ける。 コクリと僕の喉が動くのを見たウェイターが、満足そうにニタリと笑った。 「美味しい!飲みやすいですね、これ」 「気に入っていただけて光栄です。 もう少しお休みになられてから会場へ戻られては」 「そうします、ありがとうございます」 近くにある椅子へ腰掛ける僕に「では失礼します」と言い、素早く立ち去る姿。 多分あれは仲間を連れてくる。会場内に行かなかったのを見ると外にもいる。 「………っ!」 後ろ姿が見えなくなったのを確認し、素早く立ち上がった。

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