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第31話 上手
やっと胸の動悸がおさまり、頭が冷静になると、
何やら朔久の病室である、307号室から不規則な呼吸音が聞こえてくることに気がついた
病室に駆け込むと、ぼんやりと目を開けた朔久くんが苦しそうにベッドに横向きに倒れている
っはぁっひゅっは…っ…
「朔久くん!!!!?」
ごほっごほっ…っひゅ…
「朔久くん!!!起きて!!!!」
駆け寄って背中を擦りながら声をかけていると、ドタドタと廊下を走る音が聞こえ、宗一郎先生が必死な顔をして駆け込んできた
「宗一郎先生!!戻ってきたんですか!?」
「あぁ!朔久が心配でな。朔久、聞こえるか?」
走ってきたせいか、少し荒い呼吸を整えながらも優しく声をかける
「…っあ…ひやまさ…」
うっすらと目を開けて、宗一郎先生に手を伸ばすが、その様子は弱々しく、
上手く息が吸えないせいもあってか、ぼろぼろと涙を流している
すると宗一郎先生は近くにあったタオルケットを朔久くんの口元に当てた
「ゆっくりでいい。
何も怖いものなんてない。大丈夫だ…」
「っふ…は…すぅ…はぁ…」
「…上手」
といいながら、身体を預け切っている朔久くんの頭を優しく撫でる
気が付くと聞こえて来るのは、不規則な荒い呼吸ではなく、規則正しい寝息になっていた
まだ頬に泣きあとの残る朔久くんを見つめる宗一郎先生の表情は、今まで見たことがないくらい穏やかで、それでいてどこか悔しそうだ
(あぁ…この2人はいつか…いや、すぐにでも……)
「ふふっ、いいねぇ。」
まるで自分と恋人の過去を見ているようで、少し笑うと、宗一郎先生は恋人に少し似た顔で、不思議な表情をしてこちらを見た
「ううん、ただ会いたいなぁって思っただけ。」
「…?……あー…あいつですか。」
察したようで苦笑いをする
宗一郎先生は朔久くんを抱き抱えて、
僕はぐちゃぐちゃになってしまったシーツを整えながら話す
「うん。流石兄弟だね。やっぱりちょっと似てる」
「そうですかね?
というよりも、直接会いたいって言ったら多分飛んできますよ。」
「うーん………でもまだ『待て』かな」
「ふっ、優しくしてやってください」
宗一郎先生はそう言って朔久くんを寝かせると、隣の椅子に座った
「今日は俺が見てるので、櫻井先生は少しでもいいので仮眠に行って下さい。
隈が酷いですよ」
ふと時計を見ると既に朝の4時になる所で、3時には寝て、5時頃から再びカルテの整理をしようと思っていたことを思い出した
「あ、もうこんな時間か。
最悪帰ったら寝るから大丈夫。
でもありがとう、頼んだよ。」
とだけ言い、
「はい、お疲れ様です」
という返事を耳にしながら部屋を出た。
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