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第38話 弟
朝 7時
再び二人きりになった部屋に明るい日が差し込み、そっと手を伸ばして朔久の柔らかな頬を撫でる
ちいさな寝息をたてている朔久の表情は安らかで、頬は病院に運ばれてきた時よりも遥かに血色が良い
(本当に良かった……)
(一応あいつらにも連絡しておくか。)
病室を出て、スマホを取り出してlimeを開いて通話ボタンを押そうとしたその時、誰かが駆け寄ってくるのが見えた
「宗(そう)兄さん!!!!!」
茶髪の地毛と、俺に似たふわふわとした天然パーマを揺らしながら駆け寄ってきたのは、まさに大型犬といったような性格をした弟だ
「宗臣、少し静かに…」
「かなでさんは!!!!!!?」
「連絡してからまだ10分も経ってないというのに………すごいな……」
家からは車で15分はかかるのに、一体どんな手を使ったのだろうか。
宗臣の櫻井先生に対する気持ちの強さに少し引きつつも呆れる
「いいから!!!!どこ!?」
「宗臣の櫻井先生に対する愛情は凄いな。
櫻井先生は仮眠室に…」
「了解!ありがと!!!!またあとでね!」
「あ、あぁ、、、」
俺は嵐のように去っていく弟の背中を、ぽつんと取り残されたような気持ちで見送るしか無かった。
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