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第1話
どんな人間も、十五歳を過ぎた頃から第二の性別が顕現する。高校に上がると同時に行われる性別検査で、自分がアルファ、ベータ、オメガのいずれかであると、診断されるのだ。
小中学校でも、それぞれの身体の機能や社会的宿命について、図形やイラストを交えて説明された小冊子が配られる。まだ幼い典生 にとってはあまりにも現実味がなく、関心を持ったことなど一度もなかった。けれどある日、「あなたの性別はオメガです」と現実を突きつけられ、あの図形の最底辺に配置されたイラストが、自分の姿だったことを悟るのだ。
発情期があるせいで「セックス中毒」だとか「社会の恥」と蔑まれているオメガに対して、憐れみの気持ちさえ持っていた典生だが、もう他人事ではない。
診断結果が出ると、息子の今後を案じた父親は、すぐさま二人のガーディアンを雇い入れた。高校を卒業するまでの三年間、典生が首輪をしなくても安心して歩けるように、成長期に負担の高い抑制剤を使用しすぎないように、と気遣って。
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