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第30話
翌日。
僕は目が覚めた後、風見さんに体調を見てもらい、
家に帰っても大丈夫だと言われたので、司に手を引かれて帰る準備をした後、風見さんのところへ行った。
「あの…風見さん、ありがとうございました」
「体調が治って良かったよ。また何かあったらいつでもおいで」
「はい、お世話になりました」
頭を軽く下げお礼を言うと司が僕の頭に手を乗せ、撫でながら風見さんと話し始める。
「風見、助かった」
「いえ、若のお役に立ててよかったです」
そして挨拶を終えた僕たちは入口へとそのまま向かった。
「佑月、辛くねえか?」
「うん、大丈夫だよ。家に行くの楽しみ」
「そうか」
司の家に行くのは久しぶりな気がして
また一緒にいられると思うと嬉しかった。
まだ解決していないことはあるけれど、
それでもやっぱり今の時間は幸せだった。
「佑月、先に助手席に乗ってろ」
「わかった…司は?」
「少し仕事の話をしてくる。大丈夫だ、すぐ戻る」
「うん」
そのまま司は行ってしまったので目の前にある車に乗ろうとした時、車の陰からスーツを着た男の人がこちらに向かってやってくるのが見えた。
その男は僕の前に立ち、じっと見る。
「あの…な、なんでしょうか?」
「ああ、悪い。お前が佑月か?」
「あ、はい…」
「俺は若の第2補佐、九条誠」
「九条さん…?僕に何か用でしょうか?」
「いや、特にある訳でもないが…そうだな…お前甘いものは好きか?」
見た目はクールな感じで無口な人だと思ったのに、甘いものは好きか?なんて言われてあまりの見た目と発言のギャップに驚き過ぎて変な声が出てしまう。
「は…?え、、あ、はい。好きです。」
「そうか、ならこれをやる」
そう言って僕の手に何かを握らせた。
その手を見てみればそこには飴細工で有名なお店の飴があった。
「こ、これ!Sneprinsesse の飴細工ですか?」
「知ってるのか…?」
「勿論です!って言っても…僕なんかが手を出せるような店じゃなかったので食べた事はないんですけどね…」
「そうなのか…」
「綺麗でいつか食べてみたいなって思ってました」
「今度オススメをまた買ってくる」
「いいんですか…?ありがとうございます」
そう言って組の中に九条さんは戻って行った。
なんだか不思議な人だったな。
まさか飴細工の店を知っている人がここにいるなんて…人は見た目で判断しちゃいけないね。
そして僕は車の助手席に乗り司を待つ事にした。九条さんからの飴を眺めながら。
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