39 / 40
第39話
「司…!見て!見て!」
「ん?」
僕の言葉と共に司は後ろを振り向き
その夕日を眺めながら僕を真っ直ぐに立たせる。
「綺麗…」
「ああ、そうだな」
時間を忘れてしまうかのよう
2人でその夕日が沈むまで静かに見ていた。
そして夕日が完全になくなりかけた時
僕と司は近くにあったベンチに座った。
「司…僕ね、お母さんとお父さんと僕での3人での思い出の記憶が全くないんだ」
「…」
「今日ここに来たかったのは、なんとなくここの写真を見た時に3人で来たような気がして…それで、司にも一緒に来てもらいたかった」
「そうか」
「記憶はやっぱり思い出せなかったけど、それでもっ…今日は司と僕との思い出が1つ増えたからよかったよ!」
「俺も…お前のおかげで、今日は久々に良いものが見れた。ありがとな」
「僕こそ連れて来てくれてありがとう」
「ああ、じゃあそろそろ家戻るぞ」
「うん…」
もう少しここにいたかったけど
今日はずっとここにいてもらったし
時間も時間だから帰らないとな…
やっぱり思い出せないで終わっちゃったか…
「また連れて来てやる」
「え…?」
「次来たら思い出せるかもしれないだろ?」
「ありがとう」
やっぱりこの人は凄い。
僕が思ってる事をすぐに当てて、更にそれを
実際に成し遂げられるように助けてくれる。
「敵わないなぁ…」
そんな僕の言葉は司には届かなかったが
その大きい背中を僕はいつものように追いかけ
車へと戻った。
司が運転する車に乗りながら
僕は窓から海が見えなくなるまで眺めた。
また、来るね…
その時は、思い出が戻ってきますように。
と願いを込めて…
ともだちにシェアしよう!