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第38話
目の前に出された料理…
それは、僕が見たことも食べたこともないとても豪華なもので、綺麗に彩られた品が次から次へとテーブルの上に並べられていく。
しかも海が近いからか、海鮮料理のオンパレード。
「司…これ何…」
「あ?刺身だろ」
「そうじゃなくて、なんでこんな豪華なの!」
「豪華でもなんでもねえだろ」
「はぁ…やっぱり一般の人とは感覚がズレてるんだね…」
「何がだ。さっさと食わないと夕日見れねえぞ?」
「い、いただきます!!」
夕日が見れないのは嫌だ。
だって…その夕日に何か…僕の記憶の一部が
あるかもしれないから。
僕は目の前にあるお刺身へと箸を持っていき、
急いで食べることにした。
そんな僕とは反対に司はというと
慣れた手つきでお刺身を食べていて
その様はとても絵になっていた。
「さっきからジロジロとなんだ?ほら、手が止まってる」
「べ、別にっ!」
「はぁ…焦って食べるとつまらせるぞ」
「んっ!だいじょうぶっ!」
そのまま僕たちは料理を全て食べ終えた。
その時間は丁度夕日が下がり始めそうな時間で
ゆっくりしている司の手を引きお店を出ようとした。
「ほら!司はやく!」
「ちょっと待て、会計終わってねえだろ。食い逃げするつもりか?」
「あ…司、僕お金…ない」
「そんなもんはいらない」
そう言って司は会計場所まで行ってしまった。
「これで頼む」
「かしこまりました」
そんな様子を見ていると司は俗に言うブラックカードを懐から出し店員さんに渡しているところ見てしまった。
ブラックカード…本物を見たのは初めてだけど
まさか司が持っているだなんて…
家では自炊してるっぽかったから気づかなかったけど今日でやっとわかった。
やっぱり僕たちは住む世界が違う人間だと…
だけど、それを見たからって司から離れるということにはならないし、何よりも司とそれでも一緒にいると約束したんだから僕は信じて司について行く。
「佑月、終わったぞ」
「あ、うん。早く海行こう?」
「ん」
「あ、司!」
「なんだ」
「ご馳走様!ありがとう」
「あ、ああ…」
なんだか司は僕がお礼を言って驚いていたけど
そんなのは気にせず、司の腕を引っ張り海まで走った。
「おい、あぶねーだろ」
「大丈夫だから早く!…うわっ!」
そのまま僕は思い切り転んだ…はずなのに…
「あ、れ…?痛くない。」
「はぁ、だから言ったろ。気をつけろ」
そう言われて上を見上げればそこには
司の顔が今までにないほど近い距離にあって
その司に僕は支えられていたみたいで、転ばなかったらしい。
にしても…やっぱりかっこいい…
「なんだ?痛めたか?」
「あ、いや…そうじゃ…なくて」
「じゃあ、なんだ。ボーっとして」
「なんでもなっ…」
その時、司の向こう側にある海に目をやると
ちょうど夕日が沈み始めていて
その景色は暫く見入ってしまうほど美しく、
薄い空に広がる朱はとても輝いて見えた。
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